HARUSAI JOURNAL春祭ジャーナル

春祭ジャーナル 2014/03/10

アーティスト・インタビュー
~漆原啓子(ヴァイオリン)

東京春祭チェンバー・オーケストラのメンバーとして、また野平一郎さん、向山佳絵子さんとのトリオで音楽祭に出演する漆原啓子さんに、それぞれの演奏会の聴きどころを伺いました。


clm_keikourushihara.png ■東京春祭チェンバー・オーケストラ ~トップ奏者たちが贈る《モーツァルト》
■偉大な芸術家の思い出に ~漆原啓子、向山佳絵子、野平一郎
clm_q.png  野平さん、向山さんとはそれぞれ共演も多いと思いますが、三人で演奏する機会ありますか?
以前に軽井沢での本番で演奏したことがあります。また、本番ではありませんが野平さんが静岡で行っている伴奏法講座に向山さんと私が共演者として参加した時に、講座で受講生への見本演奏をしたりしています。三人でいろんな作品の断片をその場でパッと演奏して、野平さんは演奏しながら指導もするという。その中には一緒に演奏したことのない曲もあったりします。

clm_q.png  練習なしにパッと合わせることができるのは、それぞれがよく知っているからでしょうか。
そうですね。例えば野平さんと向山さんのデュオや、向山さんと私と別のピアニストでのトリオといったように、それぞれ共演することがあるので三人が知り尽くしている作品だと、共演したことがなくてもこのフレーズはこうやって、と互いに予測して演奏することができますね。講座やレッスンでピアニストが生徒だと演奏中に予想不能になったりしますが、野平さんと演奏すると急に呼吸ができるようになるという感じでしょうか。でも知らない作品はやはりリハーサルを重ねて作り上げていく必要があります。

clm_q.png  今回は前半がフランス作品、そして後半がチャイコフスキーの大作ですね。
野平さんとフランス作品を共演したかったので、ヴァイオリン・ソナタはラヴェルを選びました。向山さんと野平さんはドビュッシーを演奏するので、前半は野平さんのフランスワールドを堪能してもらいたいと思います。

clm_q.png  ラヴェルと後半のチャイコフスキーの聴きどころを教えてください。
ラヴェルの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」はとても大好きな曲で、第1楽章の最初の旋律はピアノの右手だけ。単旋律で流れるように始まってヴァイオリンがかぶさるのですが、絵画を見るようなイメージでしょうか。第2楽章はブルース。クラシックを聴くという肩肘張った感じではなく楽しんで聴いていただきたいと思います。そして第3楽章はヴァイオリンがずっと動いている独特な作品です。
後半のチャイコフスキーは私自身とても演奏する機会の多い作品なので、聴いたことのある方も多いのではないでしょうか。最初のテーマはチェロから始まります。ピアノは常に華やかで、第1楽章だけでも20分近くあってとてもドラマティック。第2楽章はバリエーションになっていて、穏やかなテーマがピアノだけで提示され、マズルカやフーガなどバラエティに富んださまざまな音楽が宝石箱みたいに出てきます。そしてフィナーレに突入して、最後に第1楽章がまた登場します。この作品は、いろいろなスタイルの音楽を楽しんでいただきたいですね。

clm_q.png  それぞれのソロトリオも楽しめるぜいたくなプログラムですね。そして漆原さんがメンバーにもなっている東京春祭チェンバー・オーケストラ。毎年春分の日には東京春祭チェンバー・オケの演奏が聴ける、というのもだんだん定着してきました。
東京春祭チェンバーのメンバーは、もともと大阪で活動していたアンサンブルがベースになっていて、半数以上が長年の演奏仲間。年に一度この音楽祭のために集まることを楽しみにしています。堀さんは私の師匠なので、先生の横で弾かせてもらえることは緊張もしますが、本当に嬉しいことです。そしてメンバーのほとんどは長年堀さんに指導を受けている演奏家が集まっているので、やりたい音楽はみんな同じ方向を向いています。音の響かせ方や楽器の鳴らし方など、みんな同じなのでとても美しい響きを楽しんでいただけると思います。

clm_q.png  今回はオール・モーツァルト・プログラムですが、チェンバー・オーケストラで初めて演奏する作品はありますか?
歌の入った作品は過去にも演奏していますが、モテットは初めて演奏するので、ファーストヴァイオリンは分奏する予定です。また初めてではありませんが、ディヴェルティメント 第17番は難しいので、こちらもファーストヴァイオリンはリハーサル前に特訓予定です(笑)。

clm_q.png  漆原さんは合奏やトリオ、そしてソロでも大活躍ですが、それぞれにどんな楽しみ方があるのでしょうか。
基本は同じですが、違いを言うとすれば共演楽器が増えれば増えるほどいろんな人との音楽の会話が増える、という点でしょうか。2012年に練木さんとベートーヴェンの全曲演奏会をやらせて頂きましたが、例えばピアノのパートだけどここはティンパニだな、とそれぞれのパートでオーケストラだったらここはオーボエかな、フルートかな、と一人何役にもなって音楽での会話をしていきます。無伴奏だと一人20役くらい作らなくてはならず、ピアノと一緒だと一人5役くらいに減り、と共演の人数が増えれば増えるほどリアルな会話が増えて、自分はヴァイオリンに徹していればよいので楽になりますね。

clm_q.png  最後に聴きどころやメッセージをお聞かせください。
チェンバー・オーケストラでは、堀さんのモーツァルトは本当に美しくて素晴らしいので、美しい音楽を楽しんでいただきたいと思います。


~出演公演~

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