HARUSAI JOURNAL春祭ジャーナル

春祭ジャーナル 2014/02/07

アーティスト・インタビュー
~藤木大地(カウンターテナー)

いま最も注目を集めるカウンターテナーの藤木大地さん。 今回出演する、ギターとのデュオ・リサイタルと「ブラームスの室内楽」の2公演についての聴きどころなど、たっぷりとお話を伺いました。


DaichiFujiki.png ミュージアム・コンサート 藤木大地(カウンターテナー)& 大萩康司(ギター )
■ブラームスの室内楽 ~世界で活躍するソリストたちが集結■
clm_q.png  藤木さんはテノール歌手として活動されていましたが、カウンターテナーへ転向して大変だったことはどんなことですか?
勉強してきたことの基本は同じですが、テノールではやらないテクニックの習得に時間がかかりました。ヘンデルのオペラに出てくるようなコロラトゥーラなど最初はどうやるかもわからず、一時期そればかり練習していました。あとは裏声から地声へ、いかに自然にスムースに変えられるか習得に時間がかかりましたね。
レパートリーの増やし方は、最初はコンクールやオーディションに受かるために、自分にあう作品を選んで集中的に磨いて仕上げていくといったやり方でした。コンサートの話しが少しずつ入ってくるようになり、自分の道を切り開いていくための勉強という段階を経て、演奏家として人に聴いてもらうためのレパートリーを増やすことができるようになりました。今回のプログラムで言うと「すみれ」と「野ばら」以外は以前は歌ったことがない作品でした。

clm_q.png  いまではレパートリーも数多いと思いますが、今回選んだ作品の聴きどころ を教えてください。
プログラムはダウランドからシューベルトまで時代順に並べています。 それから、春の音楽祭なので「すみれ」や「春への憧れ」「春の夢」と、タイトルに春の花や「春」という字があると春っぽいので、そういう視覚的なことも意識しました。
共演の大萩君は、昨年ダウランドも収録したCDを出しているので、ダウランドをはじめ何曲かギター・ソロも演奏してもらいます。
clm_q.png バロック時代の作品は馴染みのないお客さんもいるかと思います。どんな風に聴けばいいでしょう?
カウンターテナーとギターという組み合わせを楽しんでもらいたいです。
歌のリサイタルというと、共演は大体がピアノですよね。お客さんにとってみたら、"カウンターテナー"や、"カウンターテナーとギター"という組み合わせが、新しいんじゃないかと。そういう意味で、先入観なしに「こういう世界がある」ということを楽しんでいただければと思います。
また、ピアノやチェンバロが発明されるより前というのは、リュートのような"持つ弦楽器"があって「ダウランドの時代はこんなふうに演奏されていたんだな」というように、今回一緒に演奏するのはギターですが、視覚的にもこの時代に想いを馳せるような、そんな経験になるといいと思っています。
そして皆さんにとって聴きなれている曲、たとえば「野ばら」をカウンターテナーが歌うとどうなるのか、なんていうのも楽しみにして欲しいと思います。

clm_q.png  今回共演にギターを選んだ理由を聞かせてください。
前回の音楽祭で国立科学博物館の演奏会を聴かせてもらったのですが、ホールがアコースティックで雰囲気もいいですね。ギターは音量の大きな楽器ではないので、大ホールだとスピーカーを入れることもありますが、ここではそんなことをしなくても充分に音が届くし、奇麗に聴こえるのではないかな、と。また手作りというか、そういう感じが出る会場だと思ったんです。もちろんピアノも合うんでしょうけれど、そんなに大きな楽器が舞台になくてもいいかな、とギターとの共演を決めました。
海外ではリュートとの共演はあるんですが、ギターとの共演は日本だけなので、 大萩康司君はいまのところ唯一の共演ギタリストです。

clm_q.png 大萩さんとは同じ宮崎出身だそうですね。
年は1歳違いですが、同じ環境で育ったという共通点があるんです。
大萩君とは地元を中心に3〜4年共演してきましたが、互いの呼吸とか分かり合えたことがたくさんあり、積み重ねというのは大事だと思います。今回二人の共演が東京で実現して、しかも90分という濃厚なプログラムを演奏することはとても楽しみ。僕たちがこれまでやってきたことの集大成みたいな感じです。

clm_q.png 「ブラームスの室内楽」は初共演の皆さんですか?
渡邊一正さんは、(日本音楽)コンクールの入賞者コンサートで共演しました。ほかのみなさんは初めてですがトップ奏者ばかり。その中に混ぜてもらって、その人たちの音を一番近いところで聴けて、自分の声を合わせることにとても興奮します。それがとても楽しみです。
そして、このコンサートを経験することでまた少し上手くなれるだろうし。ありきたりですが、胸を借りる感じです。もう、埋もれようと思っています。

clm_q.png 最後に、メッセージをお願いします。
お金と時間があれば毎日行きたいような音楽祭ですね。難しいこと抜きにして楽しんで、それが「明日も元気に頑張ろう」という気持ちに繋がるといいと思います。そのために音楽があると思うので。
ぜひ上野が一番いい季節で音楽を楽しんでください。


~出演公演~

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