HARUSAI JOURNAL春祭ジャーナル

春祭ジャーナル 2016/02/17

アーティスト・インタビュー
~四方恭子(都響ソロ・コンサートマスター) & 鈴木 学(都響ソロ首席ヴィオラ奏者)【前編】

東京都交響楽団の首席級の名手たちによる「ストラヴィンスキーの室内楽」は、生演奏の稀な曲を多く含む貴重な一夜。そこで、中心を成す四方恭子(ソロ・コンサートマスター)、鈴木 学(ソロ首席ヴィオラ奏者)の両氏に、ストラヴィンスキーの魅力や公演の聴きどころを語っていただきました。前後編の二回に分けてお送りします。

取材&文・柴田克彦(音楽ライター)

鈴木 学(左)、四方恭子(右)

鈴木:東京都美術館でのイタリアをテーマにした室内楽のほか、都響の公演にたびたび出演しています。印象としては、上野のあらゆる場所で行われている、盛り沢山で内容の濃い音楽祭。また、良い季節の上野のお祭りということで、お客様の層が幅広いように感じます。

四方:私は今回初めての出演です。上野という場所には独特の雰囲気がありますし、様々な施設で数多くの公演が開催されていて、規模も大きい。このような音楽祭は海外にもないと思います。




鈴木:三大バレエや弦楽合奏曲を演奏し、オペラも「エディプス王」と「道楽者のなりゆき」をサイトウ・キネン・フェスティバルで弾きました。

四方:かつてケルン放送響(注:四方氏は同楽団の元コンサートマスター)のシェフだったハンス・フォンクという指揮者がストラヴィンスキー好きで、小さい曲を含めて沢山やりましたね。それに都響でも「火の鳥」「ペトルーシュカ」などを演奏しています。

鈴木:まるでピカソの絵のように作風や曲想が変化し、バロック的で美しい音楽も、緊張感に充ちた音楽も、即興的なリズムが炸裂する音楽もある。音の跳躍も大胆だし、ゆっくりした音楽は非常に内省的で、魂が語るような力強さを感じさせます。こうした様々な面をもつのが魅力ですね。

四方:本当にそう。必死でリズムをとっているときに、突然綺麗なメロディが出てくるのには驚きます。また「ミューズの神を率いるアポロ」のような弦楽合奏曲には、独特の美しい響きを感じます。

鈴木:即興的なリズム。これは何度弾いても毎回サプライズがあります。あと今回の弦楽四重奏曲がそうですが、和音を分散した動きがメロディになっていて、リズムとコントラストを形成するのも特徴です。

四方:やはりリズムですね。ほんの少しズレて聞こえるような、複雑な書き方になっていたりもします。一方で、ゆったりした部分の響きは、クリスタルな透明感をもっています。

鈴木:比較的若い頃から晩年に至る色々な作風の作品を、一晩で楽しんでもらえる。それが魅力ですね。「イタリア組曲」のようなバロックのメロディ、弦楽四重奏曲のようなリズム主体の音楽、「エレジー」のような内省的な音楽があり、ソロ、デュオ、弦楽四重奏、七重奏と編成も様々。まさに東京春祭だからこそ可能なプログラムです。

四方:「イタリア組曲」はよく弾かれていますよね。これはバレエ音楽「プルチネッラ」を元にした作品。原曲もオーケストラで弾いていますが、ヴァイオリン版はよくできた編曲で、何より楽しい。「ディヴェルティメント」もバレエ音楽「妖精の口づけ」から編まれた組曲。こちらも聴きやすくて楽しい作品なので、もっと演奏されてもいいと思います。

鈴木:「イタリア組曲」は、バロックの美しいメロディがストラヴィンスキーの世界に色付けされていく。そこが聴きどころです。それに、この曲があるからこそ他の曲も生きてくると思います。





~四方恭子(都響ソロ・コンサートマスター) & 鈴木 学(都響ソロ首席ヴィオラ奏者)出演公演~

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