PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2012-

ミュージアム・コンサート「ユベール・ロベールー時間の庭」記念コンサート vol.2
イタリア・ナポリ楽派の栄光~文屋小百合(ソプラノ)

プログラム詳細

Photo:青柳 聡
■日時・会場
2012.
3.30 [金] 11:00開演(10:30開場)
3.30 [金] 14:00開演(13:30開場)[各回約60分]
※ この公演は終了いたしました。
国立西洋美術館 講堂

■出演
ソプラノ:文屋小百合
チェンバロ:長久真実子
お話:陳岡めぐみ(国立西洋美術館 研究員)

■曲目
ヘンデル:歌劇《セルセ》より「オンブラ・マイ・フ」(なつかしい木陰よ)speaker.gif[試聴]
A.スカルラッティ:歌劇《ピッロとデメトリオ》より「すみれ」speaker.gif[試聴]
ペルゴレージ:もし貴方が私を愛してくれて speaker.gif[試聴]
パイジエッロ:歌劇《水車小屋の娘》から「もはや私の心には感じない」speaker.gif[試聴]
ロッティ:美しい唇よ、お前は言ったのだ speaker.gif[試聴]
ヴィヴァルディ:
 歌劇《館のオットーネ》より「来て、いとしい人よ」
 歌劇《ポントの女王アルシルダ》より
  「私はジャスミンの花」「真心をこめて」 speaker.gif[試聴]
ヘンデル:歌劇《エジプトのジュリアス・シーザー》より
  「私の運命は涙でぬれて」speaker.gif[試聴]
※当初発表の曲目より変更になりました。
[アンコール]
ペルゴレージ:《奥様女中》より「おこりんぼさん、私のおこりんぼさん」

【試聴について】
speaker.gif[試聴]をクリックすると外部のウェブサイト「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」へ移動し、
プログラム楽曲の冒頭部分を試聴いただけます。
ただし試聴音源の演奏は、「東京・春・音楽祭」の出演者および一部楽曲で編成が異なります。



~「ユベール・ロベールー時間の庭」記念コンサート~

出演者

ソプラノ:文屋小百合 Soprano:Sayuri Bunya 国立音楽大学音楽学部声楽学科卒業、及び同大学大学院音楽研究科声楽専攻オペラコース修了。二期会オペラストゥーディオ第45期修了、修了時に優秀賞を受賞。二期会オペラストゥーディオ・プロフェッショナルコース第5期修了。中山早智恵氏に師事。第12回日仏声楽コンクール入選、第21回ソレイユ新人オーディション音楽現代新人賞(1位)を受賞、第3回東京音楽コンクール声楽部門第1位、優勝者コンサートにて東京交響楽団と共演。
オペラでは、《フィガロの結婚》伯爵夫人役、《コシ・ファン・トゥッテ》フィオルディリージ役、《ラ・ボエーム》ミミ役に出演、二期会ニューウェーブオペラ《ポッペアの戴冠》タイトルロールに出演、《ジュリアス・シーザー》クレオパトラ役に出演、日本オペラ団体連盟・新人育成オペラ公演《ヘンゼルとグレーテル》の眠りの精に出演、新国立劇場主催小劇場オペラ《セルセ》アタランタ役に出演。2009年10月には、二期会オペラ公演《蝶々夫人》にてタイトルロールに出演。コンサートでは、モーツァルト《孤児院ミサ》《ハ短調大ミサ》《ヴェスペレ(夕べの祈り)》、ドヴォルザーク《スターバト・マーテル》等の宗教曲や、ベートーヴェン《第九》のソリストとして数々のコンサートに出演。また、NHK FM「名曲リサイタル」に出演。2011年3月に東京文化会館小ホールにてソロリサイタルを開催。
2011年11月には、二期会公演《ドン・ジョヴァンニ》ドンナ・アンナ役に出演の予定。

ソプラノ:文屋小百合 Soprano:Sayuri Bunya

チェンバロ:長久真実子 Cembalo:Mamiko Nagahisa 兵庫県出身。東京藝術大学チェンバロ科卒業。同大学院修了。安宅賞受賞。これまでに通奏低音奏者としてバッハ・コレギウム・ジャパン、神戸市室内合奏団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、東京都交響楽団等の演奏会及びレコーディングに参加。アンサンブル、通奏低音奏者として定評があり、多くのアーティストと共演。NHK-FMリサイタル出演。2002~08年まで東京藝術大学古楽科助手を務める。2011年「第1回チェンバロ・フェスティバルin東京」に水永牧子氏とのデュオで出演し好評を得る。現在、神奈川県立弥栄高校音楽科非常勤講師。

チェンバロ:長久真実子 Cembalo:Mamiko Nagahisa

■曲目解説

ヘンデル:「オンブラ・マイ・フ」
 ヘンデルのオペラを聴いたことがない人でも、この曲を知らない人はまずいないだろう。1730年代後半のロンドンでは、すでにイタリア・オペラが衰退期に入っていたが、ゲオルク・フリ-ドリヒ・ヘンデル(1685-1759)は、そこで新たに喜劇的な路線に打って出た。そして書かれた歌劇《セルセ》(1738年初演)の第1幕第1場、プラタナスの木陰でペルシャ王セルセが歌うこのアリアは、気品にあふれ、心地良い木陰の雰囲気を絶妙に醸し出している。

A.スカルラッティ:歌劇《ピッロとデメトリオ》より「すみれ」
「ナポリ楽派の父」とも称されるアレッサンドロ・スカルラッティ(1660-1725)は、膨大な作品を書いた。当時のナポリで上演される新作オペラの実に半数がスカルラッティの作だったとも言われている。最も成功した3幕の歌劇《ピッロとデメトリオ》は、1694年にナポリのサン・バルトロメオ劇場で初演を迎えたが、その中のアリア「すみれ」は、優美な歌詞と旋律とがあいまって、イタリア古典歌曲の中でも多くの声楽家に愛される定番となっている。

ペルゴレージ:もし貴方が私を愛してくれて
17、18世紀におけるイタリア・オペラの多くは、楽譜は出版されず人気を得たアリアだけが手稿譜によって後世に伝えられた。それらがA.パリゾッティ(1853-1913)等によりピアノ伴奏をつけて編曲され、イタリア古典歌曲というかたちで世に出たのは、20世紀初頭のことである。ペルゴレージ(1710-36)作とされているこの曲は、パリゾッティが出版した『古典アリア集』第1巻(1885)で紹介されているが、実はパリゾッティ自身の作ではないかと言われている。しかしその哀感溢れる旋律は、一度耳にすると忘れられないものがある。

パイジエッロ:歌劇《水車小屋の娘》から「もはや私の心には感じない」
「もはや私の心には感じない」は、100曲近いオペラを作曲したジョヴァンニ・パイジエッロ(1740-1816)の作品の中でも、最も美しく、また最も有名な曲である。後にはベートーヴェンやパガニーニが、この曲を主題として変奏曲を作曲したことでも知られている。この曲は、3幕のオペラ・ブッファ《水車小屋の娘》(1789)においてヒロインが歌うアリエッタで、愛の苦しみを歌う詞とは裏腹に、軽やかな優美さを持つ旋律が美しい。

ロッティ:美しい唇よ、お前は言ったのだ
イタリア・バロック盛期の作曲家アントニオ・ロッティ(1667-1740)は、優れた教育者でもあった。彼の門下には、マルチェッロ、ガルッピ、ゼレンカ等、錚々たる名前が連なる。「美しい唇よ、お前は言ったのだ」は、先述のパリゾッティ『古典アリア集』にも収められている。ロッティの作曲は広いジャンルに渡り、バッハが彼のミサ曲を写譜して持っていたという逸話もある。つまり、彼は盛期バロックから初期古典主義への橋渡しをした作曲家でもあった。

ヴィヴァルディ:歌劇《館のオットーネ》より「来て、いとしい人よ」
まさしく膨大な量の作品を遺したアントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741)がオペラに身を入れ始めたのは、《調和の霊感》が1711年に出版されたあたりからである。歌劇《館のオットーネ》は1713年に初演され、彼のオペラ処女作となった作品で、「来て、いとしい人よ」はその中のアリア。しっとりと落ち着いた曲調で、愛する人を待ちわびる心情を歌う。

ヴィヴァルディ:歌劇《ポントの女王アルシルダ》より「私はジャスミンの花」「真心をこめて」
ヴィヴァルディは人並み外れた速筆で知られ、自身の言によれば、オペラだけでも優に100曲近く書いたという。しかしその中で確認されているものが半数、不完全なかたちであれ楽譜が残っているのは20曲余りに過ぎない。3幕の歌劇《ポントの女王アルシルダ》は、双子の入れ違いを軸に2組の王子と王女の恋の行方を描いた作品。「私はジャスミンの花」「真心をこめて」は、どちらもその第1幕で歌われるアリアである。1716年秋に、ヴィヴァルディの根城であったサン・タンジェロ座で初演された。

ヘンデル:「私の運命は涙でぬれて」
ヘンデルは「ドイツ」で生まれ、「イギリス」に渡って、ナポリ楽派の流れを汲んだ「イタリア・オペラ」を書き、後には英語テキストのオラトリオを書いた。彼のイタリア語によるオペラの中でも傑作とされているのが、ロンドンに来てからのオペラ10作目に当たる《エジプトのジュリアス・シーザー》(1724年初演)である。この悲しみに満ちたアリアは第3幕第3場において、囚われの身となったクレオパトラが、翻弄される自身の儚き運命を嘆くシーンで歌われる。



主催:東京・春・音楽祭実行委員会 協力:国立西洋美術館

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