PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2012-

ブラームスの室内楽
~堀米ゆず子と仲間たち

プログラム詳細

Photo:堀田力丸
■日時・会場
2012.4.7 [土] 16:00開演(15:30開場)※ この公演は終了いたしました。
旧東京音楽学校奏楽堂

■出演
ヴァイオリン:堀米ゆず子
ヴィオラ:ロジャー・チェイス
ピアノ:津田裕也

■曲目
ブラームス:
 ヴィオラ・ソナタ 第2番 変ホ長調 op.120-2 speaker.gif[試聴]
 ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 op.108 speaker.gif[試聴]
 ホルン三重奏曲 変ホ長調 op.40(ヴィオラ版) speaker.gif[試聴]
[アンコール]
ブラームス:ホルン三重奏曲 変ホ長調 op.40(ヴィオラ版)より 第2楽章

【試聴について】
speaker.gif[試聴]をクリックすると外部のウェブサイト「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」へ移動し、
プログラム楽曲の冒頭部分を試聴いただけます。
ただし試聴音源の演奏は、「東京・春・音楽祭」の出演者および一部楽曲で編成が異なります。


出演者

ヴァイオリン:堀米ゆず子 Violin:Yuzuko Horigome 5歳からヴァイオリンを久保田良作氏のもとで始め、1975年より江藤俊哉氏に師事。1980年、桐朋学園大学卒業。1980年エリザベート王妃国際音楽コンクールで日本人初の優勝を飾る。以来ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団、シカゴ交響楽団、クラウディオ・アバド、小澤征爾、サイモン・ラトル等、世界一流のオーケストラ、指揮者との共演を重ねている。
世界中の音楽祭に数多く招かれ、その中にはアメリカのマールボロ音楽祭、ギドン・クレーメルの主宰するロッケンハウス音楽祭、ルガーノのアルゲリッチ音楽祭(スイス)、フランダース音楽祭(ベルギー)等がある。室内楽にも熱心に取り組んでおり、これまでにルドルフ・ゼルキン、マルタ・アルゲリッチ、ジャン=マルク・ルイサダ、ギドン・クレーメル、ミッシャ・マイスキー、今井信子、アントニオ・メネセス、チャールズ・ナイディック等と共演している。
日本においては、2003~06年に渡ってピアニスト児玉桃と取り組んだモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ選集、2007年から3年間に渡ってピアノのアブデル・ラーマン・エル=バシャとのベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏、2006~10年の5年間行った「堀米ゆず子ヴァイオリンワークス“音楽の旅―叙情を求めて”」等のシリーズ企画が高い評価を得ている。このシリーズは、ライブ録音によりCD化もされている。
また、かつて評価の高かったシャーンドル・ヴェーグ指揮カメラータ・ザルツブルクとの『モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集』(2枚組)、エリザベート王妃国際音楽コンクール優勝時のライブ録音『シベリウス:ヴァイオリン協奏曲他』(2枚組)のCDが復刻。新譜としては、フランスでニース・フィルハーモニー管弦楽団と録音した『ラロ:ヴァイオリン協奏曲集』、『ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ集』が全世界で発売されている。2010年12月にはBS-TBSのドキュメンタリー番組「未来へのおくりもの」で、その幅広い活動が紹介されて話題を呼んだ。
現在、ブリュッセル王立音楽院教授。使用楽器はヨゼフ・グァルネリ・デル・ジェス(1741年製)。

公式サイト http://www.palp.com/yuzukohorigome/

©中村 治

ヴァイオリン:堀米ゆず子 Violin:Yuzuko Horigome

ヴィオラ:ロジャー・チェイス Viola:Roger Chase ロンドン生まれ。王立音楽院でバーナード・ショアに師事。カナダでは、スティーヴン・スタリクに学ぶ。伝説のヴィオリスト、ライオネル・ターティスのもとで短期間だが仕事をした。現在、ターティスが使っていたヴィオラ〈モンタニアーナ〉で演奏をしている。
BBCプロムスのソリストとしてロイヤル・アルバート・ホールでイギリス室内管弦楽団と演奏した他、イギリス国内、ヨーロッパ各地、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、中東、インド等の主要オーケストラと演奏。また、スヒールモニコーフ(オランダ)、コンソナンス(フランス)、カザルマジョーレ(イタリア)、ボウドイン(北米)等の国際音楽祭に招かれて演奏している。ナッシュ・アンサンブルのヴィオリストとして20年間在籍した他、ロンドン・シンフォニエッタ、エステルハージ・バリトン・トリオ、カルテット・オブ・ロンドン、ハウスムジーク・ロンドン、ロンドン室内管弦楽団でも演奏。
DuttonレーベルからMichiko Otaki(ピアノ)との共演でCDがリリースされている。アーノルド・バックス、アーサー・ブリス、ヴォーン・ウィリアムズ、ベンジャミン・デイル、スタンリー・ベイト、W.H.ベル、エドムンド・ルブラ等の希有な作品、ディーリアスのソナタ、ターティスが編曲したアイアランドのソナタ等が録音されている。最新のCDは、ブラームスの3つのソナタを録音したもので、Centaurレーベルからリリースされている。また、ナクソス・レーベルからリリースされている『The Virtuoso Viola』には、アーサー・ベンジャミン、ジョルジェ・エネスク、ジョゼフ・ジョンゲン、ヴュータン、パガニーニ、コダーイ編曲のバッハ、クライスラー、バーナード・ショアが録音されている。
ロジャー・チェイスは、王立音楽院、ギルドホール音楽演劇学校、王立ノーザン音楽大学、オベーリン大学等で後進の指導に当たってきて、現在はシカゴのルーズベルト大学で教えている。ナショナル・ギャラリー、プリンストン大学、クリーヴランド、ボストン、トロント等で、ライオネル・ターティスから多大な影響を受けて作られた作品のリサイタルを開催してきている。

ヴィオラ:ロジャー・チェイス Viola:Roger Chase

ピアノ:津田裕也 Piano:Yuya Tsuda 1982年、仙台市生まれ。2001年、第70回日本音楽コンクール第3位。2005年、東京藝術大学を首席卒業、安宅賞、アカンサス音楽賞、同声会賞等、数々の受賞を果たす。2007年、第3回仙台国際音楽コンクールにて第1位、および聴衆賞、駐日フランス大使賞を受賞。同年、仙台市より「賛辞の楯」を、宮城県より芸術選奨新人賞を授与される。2010年、東京藝術大学大学院修士課程を首席修了、併せてクロイツァー賞を受賞。2011年ベルリン芸術大学を最優秀の成績で卒業、現在同大学国家演奏家コースに在籍。ローム・ミュージック・ファンデーション奨学生。
ソリストとしてベルリン交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、広島交響楽団、ドイツ室内管弦楽団等と共演。東京、仙台、新潟でソロリサイタルを開催する他、NHK-FM「名曲リサイタル」、仙台クラシックフェスティバルへの出演、2010年からはドイツ各地でもソロリサイタルを開催、地元紙にて好評を博す。SIMCレーベルよりソロアルバム『悲愴、さすらい人幻想曲』を発売。
室内楽活動にも積極的で松山冴花氏とデュオを組み、ナミレコードより3枚のCDをリリース。また、ジェラール・プーレ、堀米ゆず子、漆原啓子、漆原朝子、山崎伸子の各氏と共演している。ヴァイオリン白井圭、チェロ門脇大樹とともにピアノトリオ「Accord」を結成し、東京、札幌、九州を始め国内各地で演奏。 これまでにパスカル・ドヴァイヨン、ガブリエル・タッキーノ、ゴールドベルク山根美代子、角野裕、渋谷るり子の各氏に、室内楽をゴールドベルク山根美代子、田中千香士、河野文昭、山崎伸子の各氏に師事。

©武藤 章

ピアノ:津田裕也 Piano:Yuya Tsuda

■曲目解説

ブラームス:
ヴィオラ・ソナタ 第2番 変ホ長調 op.120-2
ヨハネス・ブラームス(1833-1897)晩年の1894年夏、バート・イシュルで書かれた《2つのクラリネット・ソナタ》作品120は、ブラームスにとって最後の室内楽作品となった。のちに作曲家自身によるヴィオラ版への編曲が行われたが、クラリネットでは演奏できない重音部分が含まれる等、楽器の音色からしても単にクラリネットをヴィオラに持ち替えただけではない広がりが生まれている。今日ではむしろ「ヴィオラ・ソナタ」として演奏される機会も多い。第3楽章においては、主題と5つの変奏が美しく織り成されて、ブラームス最後のソナタの幕を閉じる。

ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 op.108
すでに4曲の交響曲を書き終えたブラームスの円熟期を代表する一曲といえる。ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全3曲のなかでも、もっともスケールが大きく、何よりも抒情的な旋律の美しさと、曲全体に見られるシンコペーションのリズムが印象的な曲である。1886~88年の夏の間、豊かな自然に囲まれたスイスの避暑地トゥーン湖畔で満たされた日々を過ごしながら、しかし次々と親しい友人たちの訃報等に接したこともあり、ブラームスの内面は次第に深い諦観へと傾斜していく。その憂愁を帯びた枯淡の味わいは、第2楽章冒頭のG線で奏されるヴァイオリンの旋律に凝縮されている。

ホルン三重奏曲 変ホ長調 op.40
当時のドイツでは、すでにバルブ付きの近代的ホルンが主流であったが、ブラームスは旧式のナチュラル・ホルンに愛着を寄せていた。少年の頃、母に吹いて聴かせていたという挿話もある。したがってこの曲も、ナチュラル・ホルンの懐古的で柔らかな響きを意識して書かれている。1865年5月、広大なシュヴァルツヴァルト(黒い森)に隣接した保養地バーデン=バーデンで、全曲が完成した。同年2月には愛する母が他界しており、深い憂愁に閉ざされた第3楽章は亡母への哀悼だろうか、アダージョ・メスト(ゆるやかに悲しみにみちて)との指示がある。今回、ホルンパートはヴィオラによって演奏されるが、この楽器の持ち替えはブラームス自身によって認められているものである。



主催:東京・春・音楽祭実行委員会 後援:公益財団法人台東区芸術文化財団

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