PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2017-

ミュージアム・コンサート東博でバッハ vol.34 北村朋幹(ピアノ)

リーズ国際コンクール、東京音楽コンクールをはじめ、数々の音楽祭でもすでにソリストとしてのキャリアを積む若きピアニスト。現在はベルリン芸術大学に在学し、古楽も学ぶ北村朋幹が贈る、バッハに捧げる一夜。

プログラム詳細

2017:03:28:19:00:00

■日時・会場
2017.3.28 [火] 19:00開演(18:30開場)
東京国立博物館 平成館ラウンジ

■出演
ピアノ:北村朋幹

■曲目
シューマン:4つのフーガ op.72 [試聴]
細川俊夫:エチュード I −2つの線−
J.S.バッハ:2声のインヴェンション BWV772-786 [試聴]
バルトーク:組曲 《戸外にて》 より 第4曲 夜の音楽 [試聴]
J.S.バッハ:パルティータ 第6番 ホ短調 BWV830 [試聴]

[アンコール]
メンデルスゾーン:デュエット op.38-6 (《無言歌集 第3巻》より)

【試聴について】
[試聴]をクリックすると外部のウェブサイト「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」へ移動し、プログラム楽曲の冒頭部分を試聴いただけます。ただし試聴音源の演奏は、「東京・春・音楽祭」の出演者および一部楽曲で編成が異なります。



北村朋幹さんからのコメント

今回、この「東博でバッハ」シリーズのお話をいただいた際に、すぐに思い浮かんだ作品が2つありました。

シューマンの≪4つのフーガ≫は、演奏される機会のあまり多くない作品ですが、彼にしか書くことのできない、陶酔的ですらある非常に内的で繊細な心が、フーガの形式を徐々に逸脱しながら溢れ出します。この作品を人前で演奏させていただくのは3年ぶりですが、時々自分の心がどうしてもこの音楽を求めている時があり、その都度自分の部屋でそっと弾いてる、とても大切な1曲です。
一方バッハの≪パルティータ第6番≫は、記念碑的なこの作品群の中でも最も名高い1曲で、調性や現れる素材のみでなく、その精神性からはマタイ受難曲が否応なく聴こえ、ピアノ(チェンバロ)独奏という極めて個人的な世界からは到底考えられないような圧倒的な力で、過去や未来、世界や宇宙へまで何かを訴えかけ、その中に常に存在する人間というものについて問うているような、そんな作品です。

この2作品は、対極を向いているようでありながら、ピアノという楽器がもつ可能性を最大限に示してくれている組み合わせである気もしています。
外へ、内へ、何かを届ける力。
この数年、ピアノを演奏するという行為の不思議さについてずっと思いを巡らせていて、その単純性ゆえの絶望的な難しさと、だからこそそこでしかあり得ない、純粋な喜びを感じるこの頃です。僕が最も尊敬する作曲家の1人である細川俊夫さんが5年前に書かれた、彼のエチュード集の出発点である≪2つの線≫は、そんな最中に出会い、この思いに答えや、或いはその不思議をさらに深めてくれた作品の1つです。
その複雑で単純な世界から想起されるのは当然、バッハが同じコンセプトのもと書いた全15曲の≪インベンション≫。こどもの時に大きな喜びをもって触れた思い出が誰にでもあるこの作品には、常にはじまりを感じられる希望があり、余白に残された可能性があり、そして恐らく、懐かしさゆえのノスタルジーもあるのではないでしょうか。

僕は(実は)1年と少しだけですが、東京藝術大学に通っておりました。上野の森を抜けた思い出などと偉そうに語ると、長く通っている方々に怒られてしまいそうですが、夜19時からの公演でどうしてもバルトークの傑作≪夜の音楽≫を演奏したかったのは、僕にとって本当に大切な作曲家である彼の、バッハへの大きな尊敬と愛情に加えて、どこからか自然の響きが聴こえてきてくれないかと、期待してしまうからです。

東京・春・音楽祭は毎年、様々な創造的な公演があり、プログラムを眺めるのがいつも楽しみでした。今回初めて参加させていただけることを、心より楽しみにしております。


チケットについて

■チケット料金(税込)

席種 全席自由
料金 ¥3,600

 ■発売日
  一般発売:2016年12月8日(木)10:00

■曲目解説

シューマン:4つのフーガ

心身ともに困憊の極にあったシューマンは1844年暮れ、ライプツィヒからドレスデンに移住した。そこで彼はしばしバッハの研究に没頭し、創作意欲を取り戻していく。1945年に完成した「4つのフーガ」はその成果の一つ。4楽章構成で、バッハを範とした静謐な対位法のなかにも、シューマン独特の危うげな美しさが感じられる。ドイツ・ロマン派のピアニストで作曲家のカール・ライネッケに献呈された。

細川俊夫:エチュード I –2つの線−

全6曲のピアノのための《エチュード》は、2011~13年に作曲された。「エチュード I」は、2011年の第58回ブゾーニ国際ピアノ・コンクールの本選課題曲として作曲され、翌12年に改訂された。作曲者本人も言及している通り、「エチュード」というタイトルながら、練習曲というよりも、独自性を持つ「東洋的な考え方から生れる音楽言語」を実践する試みであった。

J.S.バッハ:2声のインヴェンション

1720年、バッハは息子の教育を目的に《クラヴィーア小曲集》を書き始めた。そこには15曲の2声の小曲が収められており、これが「2声のインヴェンション」の原型である。その後、曲の配列や推敲を経て、最終版の清書譜が完成したのは1723年、ケーテンの宮廷楽長時代の終わり頃だった。奏法の習熟だけでなく、一つの動機を展開させて曲を構築するための様々な作曲技法が試されており、なおかつそこには完全な形式美と情緒さえもがバランスよく配合されている。たった2本の線だけで豊かな音楽表現が可能であることを示した、聴きごたえのある作品となっている。

バルトーク:組曲《戸外にて》 より 第4曲 夜の音楽

1926年に書かれた5曲からなる組曲《戸外にて》は、一種の描写音楽であり、田園の生活が色彩豊かに描かれる。その第4曲「夜の音楽」は、夜の物音を虫の鳴き声で表現しており、一風変わったノクターンとなっている。

J.S.バッハ:パルティータ 第6番

クラヴィーアのための「パルティータ」(全6曲)は、バッハが聖トーマス教会のカントールを務めていたライプツィヒ時代の作品。1726年に第1番から出版され始め、1731年に第6番までの6曲が《クラヴィーア練習曲集 第1部》としてまとめられた。全パルティータに共通するのは、アルマンドに先行する第1曲にスタイルの異なるプレリュード風の音楽が置かれている点である。第6番はトッカータに始まり、曲集の最後を締めくくるにふさわしい個性的な舞曲が並ぶ。特に第6曲テンポ・ディ・ガヴォッタから終曲ジーグへと向かう流れは息もつかせぬほどで、一つの聴きどころである。

主催:東京・春・音楽祭実行委員会 共催:東京国立博物館 協力:日本音響エンジニアリング株式会社


※掲載の曲目は当日の演奏順とは異なる可能性がございます。
※未就学児のご入場はご遠慮いただいております。
※やむを得ぬ事情により内容に変更が生じる可能性がございますが、出演者・曲目変更による払い戻しは致しませんので、あらかじめご了承願います。
※チケット金額はすべて消費税込みの価格を表示しています。
※ネットオークションなどによるチケットの転売はお断りいたします。

(2017/03/30更新)

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