東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2015-
ミュージアム・コンサート「大英博物館展―100のモノが語る世界の歴史」
プレ・コンサート vol.1 〜佐藤亜紀子(リュート)
「人類の文化遺産の殿堂」大英博物館が、総力をあげて全8部門のコレクションを一堂に集めた特別展の開幕直前のプレ・コンサート。vol.1ではキリスト文化とイスラム文化が融合した14〜16世紀のイベリア半島(スペイン)を舞台にします。
プログラム詳細
2015:03:29:14:00:00
2015.3.29 [日] 14:00開演(13:30開場)[約60分]
東京都美術館 講堂
■出演
ソプラノ:鏑木 綾、森川郁子
中世ダルシマー、ハックブレット:小川美香子
構成・中世リュート、ビウエラ:佐藤亜紀子
中世フィーデル、ヴィオラ・ダ・ガンバ:坪田一子
■曲目
《モンセラートの朱い本》より
第1曲 おお、輝く聖処女よ
第4曲 処女なる御母を讃美せん
第2曲 輝ける星よ
第5曲 あまねき天の女王よ
第8曲 七つの悦び
第6曲 声をそろえいざ歌わん
第10曲 われら死をめざして走らん
フランシスコ・デ・ラ・トーレ:ダンサ・アルタ《ラ・スパーニャ》
フアン・バスケス:かわいい小麦色の娘さん、キスしておくれ
ミゲル・デ・フェンリャーナ:ムーア人はアンテケーラから去って
ルイス・ミラン:ため息をつくバルドビノス
ハインリッヒ・イザーク:ムーア人の女
ディエゴ・ピサドール:聖ヨハネの朝
ディエゴ・オルティス:
レセルカーダ 6番
レセルカーダ 7番
レセルカーダ 1番
作者不詳:
君の目には愛の何かがある(ロバート・ダウランド編「音楽の響宴」(1610)より)
[アンコール]
ファン・アラニェス:チャコーナ~すてきな人生に
~「大英博物館展―100のモノが語る世界の歴史」プレ・コンサート ~
出演者
ソプラノ:鏑木綾 Soprano:Aya Kaburaki 国立音楽大学声楽科を卒業。東京藝術大学大学院古楽科バロック声楽専攻修士課程修了。声楽を稲森雅子、益田道昭、佐竹由美の各氏に師事。バロック声楽を鈴木美登里、野々下由香里の各氏に師事。古楽アンサンブルを大塚直哉、グレゴリオ聖歌とルネサンスポリフォニーを花井哲郎の各氏に師事。高校生の頃から
ソプラノ:森川郁子 Soprano:Yuko Morikawa 桐朋学園大学声楽科及び同大学研究科2年修了。声楽を牧川修一、石井美香、古楽声楽を原雅巳、小林木綿、鈴木美登里各氏に師事。国内外でロベルタ・インヴェルニッツィ、ゲルト・テュルク、ジル・フェルドマン各氏に学び、中世から現代音楽まで幅広いレパートリーで演奏活動を行う。ソロではリュートやビウエラ、チェンバロ、室内楽トリオ、オーケストラ等
中世ダルシマー、ハックブレット:小川美香子 Dulcimer、Hackbrett:Mikako Ogawa 打弦楽器をR・シュトラウス音楽院(ミュンヒェン)のB.シュトルツェンブルグ氏に師事。 2007年11月、ルーマニアのビストリッツァ及びブラショフにて、サロンコンサートに出演。 2012年、台湾で行われたWOCMAT(International Workshop on Computer Music and AudioTechnology)に出演。
構成・中世リュート、ビウエラ:佐藤亜紀子 Medieval Lute、Vihuela:Akiko Sato 東京藝術大学音楽学部楽理科卒。在学中に左近径介氏と水戸茂雄氏にリュートの指導を受ける。ドイツ国立ケル ン音楽大学でコンラート・ユングヘーネル氏に師事し、2000年にソリスト・ディプロマ取得。その後、スイスのバーゼル・スコラ・カントールムでホプキン ソン・スミス氏に師事。2003年に帰国。同年より2010年3月まで東京藝術大学音楽学部古楽科教育研究助手を務める。
中世フィーデル、ヴィオラ・ダ・ガンバ:坪田一子 IchikoTsubota 国立音楽大学楽理学科卒業。ヴィオラ・ダ・ガンバを神戸愉樹美氏に師事。卒業後、コンソートおよびアンサンブルの通奏低音奏者として主にバロック音楽の演奏活動を行ってきたが、最近では中世・ルネサンス音楽にも意欲的。現在、上野学園中学・高等学校で古楽アンサンブルの授業を担当し若い人にヴィオラ・ダ・ガンバを教えている。
「大英博物館展 ― 100 のモノが語る世界の歴史」プレコンサートに向けて佐藤亜紀子(リュート奏者)
この展覧会では『 ヘブライ語が書かれたアストラーベ』が展示されますが、これは 1345~55 年頃にスペインで作ら れたものだそうです。
コンサート前半では、同時代のスペイン、バルセロナ近郊のモンセラートにある修道院で編纂された写本《モンセラ ートの朱い本》("Llibre Vermell de Montserrat")より 10 曲あるうちの 7 曲を抜粋して演奏します。
モンセラート(日本語で「鋸山」の意)は、むかし処女マリアが奇跡を起こした場所とされ、多くの巡礼者が山のふも とにある修道院に祀られた黒いマリア像を拝みに訪れました。サンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かう巡礼者の中 継地点でもあったようです。
この写本では聖母マリアを讃え、懇願し、祈る内容が歌われます。写本には「巡礼者達は泊まる宿がなく、修道院 の広場にて一晩中歌って踊ることを欲していたが、それは節度をもって歌われるべきで、祈りと瞑想をしたい人の邪 魔になってはならない」ということが記されています。聖職者や専門的な歌手が歌ったと思われる多声の音楽から、巡 礼者達が踊りながら歌ったような民謡風のメロディ、リズミカルな曲まで当時の音楽のいろいろな様子が伝わってくる 写本です。
コンサート後半ではスペイン大航海時代、15 世紀から 17 世紀初頭までの音楽を演奏します。この時代は音楽史で いうルネサンス時代で多声(ポリフォニー)音楽が花開いた時代です。声楽曲だけでなく、器楽曲の多声音楽が数多 く作られました。フエンリャーナ(Miguel de Fuenllana)やミラン(Luis de Milán)、ピサドール (Diego Pisador)達はビウ エラ奏者として名馳せ、オルティス(Diego Ortiz)はヴィオラ・ダ・ガンバの名手で、どのように曲を装飾するかについ ての著作を残しました。
後半に演奏する歌曲では、ムーア人について歌われます。恋物語「かわいい小麦色の娘さん、キスしておくれ」、 史実を語った歌「ムーア人はアンテケーラから去って」、たわいもない姉妹ゲンカ「聖ヨハネの朝」です。レコンキスタ 後も現地の人の心の中にムーア人の姿は刻まれていたのだと想像しています。
終曲「君の目には愛の何かがある」は、イギリスで活躍したリュート奏者ジョン・ダウランドの息子、ロバート・ダウラン ドが編集した曲集にあるスペイン語の歌です。音楽の分野でもイギリスにスペインの文化が伝わっていたということで、 コンサートを締めくくらせていただきます。
どうぞ最後までゆっくりとお楽しみください。
歌詞大意
《モンセラートの朱い本》より
おお、輝く聖処女よ
鋸山に現れた奇跡の乙女に祝福を求める内容が歌われる。
処女なる御母を讃美せん
イエスを讃え、イエスとマリアに祈り慈悲と愛を懇願している歌。
輝ける星よ
山の上に輝く星に祈りをささげている。金持ちも貧乏人もどんな人も山に登り、そこで喜びに満たされ、王侯貴族 も権力者も、そこで罪が許されると胸を叩き、「アヴェ・マリア」と叫ぶ。
あまねき天の女王よ
マリアをすべての天の女王と讃え、神の子を宿す前にも後にも罪がないと歌われる。
声をそろえいざ歌わん
「アヴェ・マリア」と一緒に皆で歌おうという内容。大天使ガブリエルのお告げで神の子を宿すことなども歌われる。
七つの悦び
マリアに関する7つの悦ばしい出来事をたたえ、「めでたしマリア、恵みに満ち、主と共におられる清らかな乙女よ」 と歌われる。
われら死をめざして走らん
現世にしがみつくのはやめよう、人生は短くすぐに終わりが来る、誰も死から逃れることはできない。乙女よ、あな たの息子に取りついでください。死をめざして走ろう。「罪を断ち切ろう!」
かわいい小麦色の娘さん、キスしておくれ
「可愛い娘、僕にキスしておくれ」「何ですって?」「言った通りさ」「覚えておいて、私はそこいらの誰かじゃない の!」
ムーア人はアンテケーラから去って
アンテケーラから去った男は手紙を持っていた。王がどんな知らせか尋ねた。男は答えた。「ドン・フェルナンドが 街を包囲しております」
聖ヨハネの朝
聖ヨハネ祭では、ムーア人は盛大な祭りをする。アルハンブラの塔の上から祭りを眺めていた恋に悩む女姉妹の ハリファとファティマ。「あらファティマ、最近はどうなのよ、お肌の調子は悪いみたいだけど……」
君の目には愛の何かがある
君の目にある僕の知らないもの、それは僕を凍らせ、奪い、傷つける。どうしてそんな苦しそうに僕を見つめて、僕 の心を奪おうとするの? そんな風に僕を見続けるなら、僕は君のことを訴えるよ!
主催:東京・春・音楽祭実行委員会 共催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)
後援:朝日新聞社 協力:日東紡音響エンジニアリング株式会社
※掲載の曲目は当日の演奏順とは異なる可能性がございます。
※未就学児のご入場はご遠慮いただいております。
※やむを得ぬ事情により内容に変更が生じる可能性がございますが、出演者・曲目変更による払い戻しは致しませんので、あらかじめご了承願います。
※チケット金額はすべて消費税込みの価格を表示しています。
※ネットオークションなどによるチケットの転売はお断りいたします。