PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2013-

ミュージアム・コンサート「ラファエロ」展 記念コンサート
vol.2 ラファエロを聴く ~中野振一郎(チェンバロ)

イタリア・ルネサンス期の巨匠、ラファエロ展記念コンサートは、当時のイタリアの大聖堂を包み込んだ聖なる響きを声楽アンサンブルで、また貴族の館でのコンサートをチェンバロによる演奏で再現します。

プログラム詳細

2013:03:21:14:00:00

© 堀田力丸
■日時・会場
2013.3.21 [木] 11:00開演(10:30開場)/14:00開演(13:30開場)[各回約60分]
国立西洋美術館 講堂

■出演
チェンバロ:中野振一郎
お話:渡辺晋輔(国立西洋美術館主任研究員)

■曲目
作者不詳:パッソ・エ・メーゾ
作者不詳:サルタレッロ「サルッツォの侯爵」
カヴァッツォーニ:リチェルカーレ「もう後悔しない」
作者不詳:ヘラクレスの力
作者不詳:パヴァーナ
クープラン:
 ラファエロ(第8組曲より)speaker.gif[試聴]
 芸術家(第19組曲より)speaker.gif[試聴]
 羊の足を持つサテュロス(第23組曲より)speaker.gif[試聴]

【試聴について】
speaker.gif[試聴]をクリックすると外部のウェブサイト「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」へ移動し、
プログラム楽曲の冒頭部分を試聴いただけます。
ただし試聴音源の演奏は、「東京・春・音楽祭」の出演者および一部楽曲で編成が異なります。


~「ラファエロ」展 記念コンサート~

出演者

チェンバロ:中野振一郎 Shinichiro Nakano 京都府生まれ。1986年、桐朋学園大学音楽学部演奏学科(古楽器専攻)卒業。 1990年10~11月に大阪で開いた4回連続の独奏会「ヨーロッパ・チェンバロ音楽の旅」により「大阪文化祭金賞」等を受賞。翌年7月、フランスの 「ヴェルサイユ古楽フェスティバル」のクープラン・サイクルに出演。ケネス・ギルバートやボブ・ファン・アスペレンら欧米を代表する名手とともに▼続きを見る 「世界の9人のチェンバリスト」の一人に選ばれる。1992年6月、「バークレー古楽フェスティバル」に最年少の独奏家として招かれる。1993年、ロンドンの独 奏会場ウィグモア・ホールでデビュー・リサイタルを開き、「日本人には珍しいパーソナリティーを持っている」と評価される。1994年10~12月にはサ イモン・スタンデイジとの二重奏を含む3回連続の演奏会「チェンバロ三夜物語」を東京で開き、その「豊かな表現」(音楽評論家・岡部真一郎=日本経済新 聞)が改めて注目を集めた。 1995年3、6、10月と日本経済新聞社主催の「日経リサイタルシリーズ/ワークショップ オブ ミュージック」に出演し、「柔軟・自由・ほどよい即興で自然体、“楽興の時”をきざんでゆく」(音楽評論家・中河原理=朝日新聞)、「さりげない素顔を見 せるこの若い音楽家は、間違いなく、日本が世界に誇るべき名手である」(音楽評論家・岡本稔=日本経済新聞)等と評された。 1999年2月のドイツ招聘演奏旅行ではコレギウム・ムジクム・テレマンを見事に率いて聴衆を沸かせ、ソリストだけでなく、オーケストラの音楽を構成する ディレクターとしての魅力も国際的にアピールした。同年10月にはバッハの大曲《ゴルトベルク変奏曲》をCD収録し、リサイタルを開催。「各変奏が持つ世 界を可能な限り忠実に描出しようとする真摯な姿勢には心を打たれる」「先人たちの遺産を鑑み、大地をしっかり踏まえた中野の解釈の方が説得力が大きい」 「この基本的な解釈にさらなる年輪が刻まれるのを見守っていきたい」(音楽評論家・岡本稔=日本経済新聞)等と絶賛された。12月の大阪公演はこれを皮切りに毎年行なわれている。 2003年5月末にはドイツより日本人として唯一招聘され「バッハ・フェスティバル・ライプツィヒ2003」に出演。ソロ演奏会及びコレギウム・ムジク ム・テレマンとの共演等、ソリスト、ミュージックディレクターとしての力量を遺憾なく発揮。なかでもライプツィヒにおける《ゴルトベルク変奏曲》は特筆すべき公演で、現地でも高く評価された。この様子はNHK教育テレビ「芸術劇場」で放映され、国内でも話題を呼んだ。2004年7月~8月に行なったドイツ での単独リサイタルツアーは現地でも大絶賛され、また同年10月に開催したリサイタルは「平成16年度文化庁芸術祭・大賞」を受賞した。近年は、幅広いレ パートリーに楽しいトークを交えたレクチャー・リサイタルを全国各地で開き、高い人気を呼んでいる。 録音にも意欲的で、フランス、イタリア、ドイツ等、各国の作曲家の作品を取り上げた多数のソロ・アルバムをリリース。なかでも2000年にリリースした 『ゴルトベルク変奏曲』はヒストリカル・チェンバロとモダン・チェンバロによる演奏を併せて収録し、レコードアカデミー賞に輝いた。コレギウム・ムジク ム・テレマンとの共演によるCDも2000年以来毎年リリースしている。2004年5月には、バッハ『フランス組曲』を発表(「レコード芸術」の特選 版)。『パーセル作品集』は2009年度第47回レコードアカデミー賞(音楽史部門)に輝く。2010年には『エリザベス朝のヴァージナル音楽』と『太陽 王ルイ14世時代のクラヴサン音楽』を同時リリースし話題を集めている。デビュー25周年を記念した「チェンバロ名曲集」(若林工房)および「デュフリ全集」(コジマ録音/浜松市楽器博物館コレクションシリーズ)も好評を博している。 著書に『チェンバロをひこう~憧れの楽器をはじめるための名曲集』(2010年/音楽之友社)がある。

©稲見伸介 ▲プロフィールを閉じる

チェンバロ:中野振一郎 Shinichiro Nakano

■曲目解説

●イタリア初期のチェンバロ作品
 イタリア初期の鍵盤音楽は、ルネサンス期の宮廷生活における舞踏の伴奏としても目覚ましい発展を遂げた。やがて舞踏そのものが廃れても古い舞曲の形式は残り、様式化されて近現代に至るまで多くの作曲家の創作意欲を刺激したのである。「パッソ・エ・メーゾ」は2拍子の軽快な舞曲、「サルッツォの侯爵」のサルタレッロは速いテンポの3拍子の陽気な舞曲となっている。ちなみにサルッツォ侯国は、16世紀までイタリア北西部に実在した国である。「パヴァーナ」は16世紀イタリアの宮廷で盛んだった舞曲で、列をつくって進退を繰り返しながら踊る。リチェルカーレ「もう後悔しない」を書いたマルコ・アントニオ・カヴァッツォーニは、16世紀イタリアのフィレンツェで活躍した作曲家。リチェルカーレ(リサーチの意)とは、前奏曲的な役割を持ち、続く楽曲の調や旋法を探し求めることに由来する。「ヘラクレスの力」のヘラクレスは言うまでもなく、ギリシャ神話に登場する半神半人の英雄だが、怪力の持ち主としても有名で、古来そのモチーフは西欧芸術において広く用いられた。


●F.クープランのクラヴサン(チェンバロ)作品
 クープラン一族と言えば、ルイ王朝のヴェルサイユ宮華やかなりし頃、フランス音楽界に君臨し、フランソワ・クープランはその一族の中で最も大きい存在である。彼はその後半生1713~30年の間に計4巻の《クラヴサン曲集》を出版した。曲集には数十曲の小品が収められ、それらが数曲ごとにオルドルと称する組曲のもとにまとめられている。内容的には古くからの舞曲とともに、ポルトレ(肖像)と呼ばれる非常にバラエティに富む標題を持った小品が多い。ポルトレは作曲家のイマジネーションを刺激した言葉であり、具体的な描写というよりはむしろ、その標題を想像しながら音楽を味わうためのものと言えるだろう。「ラファエル」は《クラヴサン曲集第2巻》(1717年)第8組曲の冒頭を飾る第1曲で、崇高さを湛えたフランス風のアルマンド。「芸術家」は《クラヴサン曲集第3巻》(1722年)第19組曲の第3曲。ニュアンスの微妙な違いを弾き分ける、指先の華麗な技が冴える曲である。「羊の足を持つサテュロス」は、死の3年前に出版された《クラヴサン曲集第4巻》(1730年)第23組曲を閉じる最終曲(第5曲)で、2部に分かれており、半獣神サテュロスの歩みが諧謔的なリズムで表現されているようでもある。


主催:東京・春・音楽祭実行委員会 協力:国立西洋美術館/読売新聞社

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