PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2013-

ミュージアム・コンサート「ラファエロ」展 記念コンサート
vol.1 イタリア・ルネサンス期の聖なる歌 ~ラ・フォンテヴェルデ(声楽アンサンブル)

イタリア・ルネサンス期の巨匠、ラファエロ展記念コンサートは、当時のイタリアの大聖堂を包み込んだ聖なる響きを声楽アンサンブルで、また貴族の館でのコンサートをチェンバロによる演奏で再現します。

プログラム詳細

2013:03:19:14:00:00

© 堀田力丸
■日時・会場
2013.3.19 [火] 11:00開演(10:30開場)/14:00開演(13:30開場)[各回約60分]
国立西洋美術館 講堂

■出演
ラ・フォンテヴェルデ
  ソプラノ:鈴木美登里、星川美保子
  カウンターテナー:上杉清仁
  テノール:谷口洋介
  バス:浦野智行、小笠原美敬
お話:渡辺晋輔(国立西洋美術館主任研究員)

■曲目
コスタンツォ・フェスタ:
 主よ、わたしたちの罪ゆえに
 立ち上がりなさい、私の愛しいひと
 ああ、いとも美しいおとめよ
 ナザレのイエスよ
 王の王である主を
 フィレンツェよ、悔恨の時だ
 救い主を育てた母

~「ラファエロ」展 記念コンサート~

出演者

ラ・フォンテヴェルデ La Fonteverde 2002年に鈴木美登里を中心に結成された日本では数少ない本格派声楽アンサンブル。16~17世紀イタリアのマドリガーレをレパートリーの中心に据え、当時の声楽曲の本質である「言葉と音楽の融合」を目指し、年に2回の定期演奏会とクリスマスコンサートをベースにした着実な活動を展開している。ソリストとしても各方面で活躍中の実力派メンバーによって構成され、▼続きを見る 声の持つ可能性を最大限に発揮し、生き生きとした表現と美しいアンサンブルの実現を目指している。10年にマドリガーレの代表的作曲家たちの作品を集めた初のCD『響きの文学』(ADJ-029)を発表し、好評を博した。 ▲プロフィールを閉じる

ソプラノ:鈴木美登里 Midori Suzuki 京都市立芸術大学声楽科大学院修了後オランダに留学し、グレゴリオ聖歌からバロック期に至る古楽声楽とアンサンブルを学ぶ。留学中より「ラ・プティット・バンド」「バッハ・コレギウム・ジャパン」のソリストとして国内外のコンサートツアー及びレコーディング活動に参加。2000年に帰国してからは、特に初期バロック期のソロ声楽曲及びマドリガーレの研究に力を注ぎ、コンサートや講習会等、積極的な活動を展開している。

ソプラノ:鈴木美登里 Midori Suzuki

ソプラノ:星川美保子 Mihoko Hoshikawa 愛知県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業、同大学院オペラ科修了。在学中、東京藝術大学バッハ・カンタータ・クラブに所属し、小林道夫氏のもとでバッハ・カンタータのソロ及び合唱を数多く演奏する。2005年3月、二期会本公演《魔笛》パミーナ役で二期会デビュー。宗教曲、オラトリオ等のソリストとしても活躍中。03~05年までドイツ・ライプツィヒに留学。毛利 準、伊原直子、クリスティーナ・ヴァルテンベルクの各氏に師事。二期会会員。

ソプラノ:星川美保子 Mihoko Hoshikawa

カウンターテナー:上杉清仁 Sumihito Uesugi 高知大学卒業。同大学院修了。東京藝術大学大学院古楽科博士後期課程を修了し、博士号(音楽)を取得。バーゼル・スコラ・カントルムにてG.テュルク、A.ショル両氏に師事。2000年、国際古楽コンクール<山梨>にて最高位、栃木[蔵の街]音楽祭賞を受賞。しなやかな美声と安定した歌唱には定評がある。バッハ・コレギウム・ジャパンメンバー。桜美林大学総合文化学群音楽専修非常勤講師。日本声楽発声学会員。

カウンターテナー:上杉清仁 Sumihito Uesugi

テノール:谷口洋介 Yousuke Taniguchi 国立音楽大学声楽科卒業。声楽を宮崎義昭、中村 健、大石正治、ヒサコ・タナカの諸氏に、古楽歌唱法をジョン・エルウィス、ゲルト・テュルクの諸氏に師事。1998年以来バッハ・コレギウム・ジャパンの主要メンバーとして国内外の演奏会やCD録音に参加している。ヘンデル《メサイア》や、J.S.バッハ《ヨハネ・マタイ受難曲》におけるエヴァンゲリスト(福音史家)等も高い評価を得ている。立教学院諸聖徒礼拝堂聖歌隊の声楽指導員。

テノール:谷口洋介 Yousuke Taniguchi

バス:浦野智行 Chiyuki Urano 東京藝術大学別科ホルン専修後、声楽に転向。日本音楽コンクールを始め数多くの入賞歴を持つ。透明かつ柔らかい声と透徹したテクスト解釈で安定した歌唱を見せている。バッハ・コレギウム・ジャパンのソリストとしても、数々の演奏会やレコーディングに参加。歌曲の分野にも力を注ぎ、特にロシア歌曲の歌唱、解釈での評価は高い。CD『トルストイのワルツ~ロシア文豪の音楽~』(キングレコード)は音楽誌上で好評を得る。

バス:浦野智行 Chiyuki Urano

バス:小笠原美敬 Yoshitaka Ogasawara 東京藝術大学大学院修了。平成14年度文化庁派遣芸術家在外研修員。バッハ・コレギウム・ジャパン、コレギウム・ヴォカーレ・ゲント、ライニッシェ・カントライ、リチェルカール・コンソート等の古楽アンサンブルに参加し、国内外で数多くの演奏会や録音を行う。ソロ活動や声楽アンサンブルへの精力的な取り組みは幅広い分野に及び、 特に古楽やドイツ歌曲の演奏には定評がある。「ラ・フォンテヴェルデ」「ジョーバン・バロック・アンサンブル」各メンバー。

バス:小笠原美敬 Yoshitaka Ogasawara

■曲目解説

解説:鈴木美登里(ラ・フォンテヴェルデ)

コスタンツォ・フェスタのモテット
 16世紀イタリアで活躍していた作曲家のほとんどはフランドル人であったが、フェスタはイタリア出身の音楽家として頭角を現し、イタリア音楽興隆の基礎を築き上げた。メディチ家出身のローマ教皇レオ10世に仕え、システィーナ礼拝堂の聖歌隊メンバーでもあった彼は、「卓越した音楽家にして名誉ある歌手」と称賛された。フェスタのモテットは、伝統的なポリフォニーの中にテーマとなる定旋律が挿入されることにより、曲の意義がより豊かに表現されているのが特徴である。

 「主よ、わたしたちの罪ゆえに Domine non secundum peccata nostra」は、罪の許しを請う前半部分に小編成のアンサンブルを用い、「助けて下さい Adiuva」という言葉から始まる後半部では声部を6声に増やすことで、人間の悲痛な叫びを表し、曲全体を劇的なものに仕上げている。

 「立ち上がりなさい、私の愛しいひと Surge amica mea」は、女声3声による作品で、冒頭の「立ち上がれ Surge」という言葉には動きのあるリズムを与え、それぞれの声部の掛け合いによってよりその意味を際立たせるなど、マドリガーレ的な要素が使われている。

 「ああ、いとも美しいおとめよ O pulcherrima virgo」は、それぞれの言葉に相応しい雰囲気が描写されており、モテットのようにテキストが変化していく音楽では、こういった手法により楽曲全体が動きのある、生き生きとしたものになっている。男声4声によるモテット。

 「ナザレのイエスよ Jesu Nazarene」では、異なった歌詞を持つ定旋律を楽曲に挿入することによって、曲の意義をより豊かにする効果を上げている。このように定旋律を楽曲の中に登場させる手法は、当時のフランドルの作曲家が好んで使っており、特にフェスタの手法はジョスカンに類似している。

 「王の王である主を Regem regum Dominum」は、同じテキストの繰り返し部分を楽曲の中に何度も導入し、終始4声部であるこの作品に、独唱と合唱の交唱のような印象を与えている。

 「フィレンツェよ、悔恨の時だ Florentia, tempus est penitentiæ」は、1527~29年のフィレンツェの反乱に際して、当時の教皇クレメンス7世の政治的声明として作曲された。このモテットは教皇に代わってフィレンツェ市民に呼びかけたものであり、メディチ家の支配下に戻って欲しいという作曲者の切なる思いが込められている。「フィレンツェよ Florentia」と何度も呼びかける箇所が印象的である。

 「救い主を育てた母 Alma redemptoris Mater」は、ポリフォニーの中にグレゴリオ聖歌の定旋律を置くという、フランドルのスタイルに則って書かれた作品で、6声が互いに絡み合いながらも時には2声部になることで緊張感を高めている。1部は聖母マリアを讃える豊かな雰囲気を、2部の冒頭は「不思議なことに」というテキストのように、神秘的に始まっている。


主催:東京・春・音楽祭実行委員会 協力:国立西洋美術館/読売新聞社

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