HARUSAI JOURNAL春祭ジャーナル

春祭ジャーナル 2014/02/24

アーティスト・インタビュー
~会田莉凡(ヴァイオリン)

オーケストラや室内楽を中心に活躍中のヴァイオリニスト会田莉凡さん。今年初めて本格的なソロ・リサイタルを行う会田さんに、意気込みを伺いました。


RibonAida.png ミュージアム・コンサート 会田莉凡 ヴァイオリン・リサイタル■
clm_q.png  まず、ずばり今回のプログラムについてお聞かせください。
私自身、大学の4年間はオーケストラや室内楽を一生懸命勉強してきて、実はソロのレパートリーがあまり多くないんです。レパートリーを増やすという意味もあって一昨年の日本音楽コンクールにチャレンジしたら運良く1位をいただいて、ソロで演奏させて頂く機会が増えました。それでもソロで演奏する時間は20分や多くて30分、短いソナタを演奏するだけで終わってしまうので、今回少なくとも2曲はソナタを取り入れたいと思い、ベートーヴェンとエネスクを選びました。
ベートーヴェンはピアノがとても難しい作品なのですが、ピアニストの林絵里さんは素晴らしいアンサンブルピアニストであると同時に、高校生のときから何度も伴奏して頂いており、さらにお母さんのような存在で、とても安心感があります。
エネスクの2番は、2010年のルーマニア国際音楽コンクールで1位を頂いた翌年にブカレストで出会った素敵な作品で、日本人の心に入ってくるようなメロディラインです。 以前1楽章だけ演奏する機会があった時に、お客さんから「いい曲だね」と言って頂いたので、いつか全楽章を演奏したいと思っており、選びました。
バッハとサン=サーンスは、日本音楽コンクールで優勝したときの最終予選の課題曲でした。サン=サーンスは最近は小学生でも演奏する作品ですが、私は機会が無く、コンクールを受ける時に初めて勉強した作品なので、1年半ぶりにもう一度勉強しなおして、弾いてみたいと思って選びました。

clm_q.png  コンクールの経験はソロ活動を行う上では不可欠、ということでしょうか。
そう思います。日本音楽コンクールはまず予選の段階で課題曲が6曲あります。特に私が1位を頂いた年の課題曲は、バッハやロンド・カプリチオーソはもちろん、国際コンクールでも絶対に弾かなくてはならないような作品(ベートーヴェンのソナタなど)があり、大人向けの選曲だったと思います。 演奏会も当然準備が必要ですが、コンクールを受けるときには「音楽」よりも「キズをなくしたい」というところに重きを置きがちになってしまい、「どうしたらミスしないで演奏できるか」とか縮こまってしまうことも多かったのですが、1位を頂いたのは4度目の挑戦でしたので、最後は審査委員の先生をはじめ、お客さんに「どうやったら楽しんで聴いてもらえるか」など、音色をこだわったり、自分なりの解釈を見つけたり、、いろんなことを考えながらじっくりと取り組むことができたので、スキルアップに繋がったと思います。

clm_q.png  会田さんはオーケストラや室内楽でも活躍していますが、それぞれの楽しさや違いがあれば教えてください。
オーケストラはやっぱり人数が多いことでしょうか。一人っ子なので人数が多ければ多いほど楽しいですね。旅などもありますし。。
またオーケストラはさまざまな楽器が集まっているので、自分がピアノとヴァイオリンのソナタ、さらには無伴奏の作品を演奏する時でも、さまざまなところからインスピレーションが湧くようになりました。
「ここはフルートやオーボエのような華やかな音が欲しい」、「チェロ・コントラバスがもしこの音型を弾いていたら、そんなに機敏には動けないな(笑)」とか、「金管楽器のコラールのようなサウンドをイメージしよう」など、オーケストラの中で弾かせてもらったことによって、たくさんの「楽器の音」を知ることができ、それをヴァイオリンでも表現できるかもしれない!と研究することが今はとても面白いと感じています。 学生時代、オーケストラではコンサートマスターしかやったことがなく、大学3年から学校外の先生方のオーケストラなどで、色んな場所で演奏する機会を頂き始めたのですが、前に座っているときと、指揮の見方はもちろんのこと、自分の弾くタイミングや音の聴こえ方がまるで違うことを知り、怖くなり、最初は音が出せませんでした。前の方だと弦楽器の音は良く聴こえますが金管は遠い反面、セカンドヴァイオリンの4プルトだと真後ろの木管が良く聴こえる、さらに対向配置だと・・など様々な座る位置を経験させてもらったこと、またオーケストラだと交響曲などもたくさん勉強でき、ヴァイオリンソロの曲はある意味限られているので、その作曲家の作風を広い視野から学ぶことが出来ました。普段、ソナタや小品だとメロディーしか弾きませんが、セカンドヴァイオリンだと伴奏型をたくさん弾くことが出来、音色や音程で和声感をつくり、全体のサウンドを変えられることを知りました。
またコンクールの本選でコンチェルトを演奏した時も、気を抜くと自分の演奏だけに気がとられがちでしたが、オーケストラの中に座っているときの感覚を思い出したことで、「協奏」のイメージを掴め、室内楽のように感じることができ、それは経験が活かされた瞬間だったと思います。
以前、小澤征爾先生から「音楽の基本は弦楽四重奏、それが大きくなったのがオーケストラ」というお話を聞いた時に、どんな時でも、どんなに編成が大きくなっても室内楽的に演奏することが大事で、芯は同じだ、ということを学びました。

clm_q.png  いらっしゃるお客さんへ、メッセージをお願いします。
昔から私は、楽譜を一通り読んでからは、CDを聴いて参考に勉強するタイプでもあります。文明が進んだからこその技だとも思うのですが・・(笑)。誰かのを聴き続けたり、また色んな種類を聴いたりして、「この解釈、とても素敵」とか「絶対にこの音が出したい」と思い、研究します。結構聴くので「ああ、きっとあの箇所は誰々さん風になって、この箇所はまた別の人風になっているんだろうな」と思って、いざ自分で弾いてみると、まったく違った解釈、音色になっているのです。「色んな人からインスピレーションはもらうけど、結局はオリジナリティが出来上がっている」という、やはり自分にしかできないアプローチがあると思うので、それを皆さんに楽しんで共感してもらえたら幸せなことと思っています。
またいろいろな国の音楽を自分なりの解釈で、特にエネスクではルーマニアで感じたこと、空気などが音に表れると思うので、ヴァイオリン1本ではないような多彩な音色を感じて頂けたら嬉しいです。


~出演公演~

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