春祭ジャーナル 2014/02/06
アーティスト・インタビュー
~秦 茂子(ソプラノ)
パリを拠点にヨーロッパで活躍中の秦 茂子さん。最近では活動の場を日本にも広げ、オペラ出演やオーケストラとの共演で注目を集めています。
「東京・春・音楽祭」でのリサイタルが日本でのデビューとなる秦さんに、今回のプログラムについてお話を伺いました。


日本でのリサイタルは今回が初めてと伺いました。プログラムを決めるときに一番考えたことはどんなことですか。
はい、ヨーロッパでは何度もリサイタルは行っていますが、日本はこれが初めてとなります。
「難しくなく、皆で共有できるもの」ということを考えました。言葉がわからないと訳詞ばかり見てしまいますが、メロディでも楽しめて、またコンサートは午後の時間なのでラウンジミュージック的に軽い感じで楽しめるようなプログラムを選びました。
聴いたことのある曲もあれば初めて聞く作曲家の名前もあると思いますが、分からなくても《私とピアニスト》という音楽の小惑星に浸ってもらえたら、と考えています。
この空間にいることが心地よく、またここで感じ得たものを持ち帰って、人間関係でも仕事でも、音楽以外の何かの糧になってもらえたら嬉しいです。

実際に歌っていただく作品についてご紹介ください。
ピアニストの佐野さんとはパリでの大学時代に室内楽を一緒に勉強していた仲間、気心が知れているピアニストの一人です。プログラム全体は佐野さんの意見も聞きながら私が決めましたが、ピアノ・ソロは佐野さんに選んでいただきました。
ルコックとオッフェンバックはオペレッタの作曲家でもあるので、楽しい曲調の作品が並んでいます。オッフェンバックの「アリとセミ」は今にも踊りだしそうな、そんな軽快な曲です。
カプレ、ルコック、オッフェンバックの作品には、それぞれタイトルについている生き物(カラスときつね、オオカミと子羊、アリとセミ)とナレーターが出てきます。登場人物たちが歌の中で対話をして、さらに鳴き声まで飛び出す、とても物語性のある楽しい作品なのです。

「ネル」と「イスパーンの薔薇」はフランスの詩人ルコント・ド・リールによるもので、とても綺麗な作品です。どちらも"薔薇"が出てくるのですが、小さなもの(薔薇)から見える色、ほのかな香り、想い。「月の光」だとまさに月明かりなど、五感に訴えるような作品が並んでいます。
全宇宙の中で五感を使って感じ取ってもらいたいですね。
あと、クララ・シューマンはフランスでもあまり取り上げられることが少ない作曲家ですが、女性のかわいらしさが出ている作品です。

オペラやオーケストラで演奏することとリサイタルでは気持ちの違いはありますか。
オペラは音楽が大きく1曲が長いのに比べて、歌曲は短いものだと20秒とか長くても5分ほど。歌曲はその短い時間の中で作品の全てを伝えていかなくてはなりません。クォリティの違いはありますが、オペラと同じように演奏する作品すべての時代や作曲家、背景なども勉強しています。本番ではどの曲も同じレベルで歌う訳ですが、自分の中ではどんなに短くても、オペラ作品と同じで熟し方が違ったりします。自分ではそれを楽しんでいます。

いまはどんなことに一番興味がありますか。
音楽に関わることすべてに!たとえば、食べ物もそうで、調理していて最終的にどういうものが出来るかというのが結構面白いですね、ちょっとした創造。時間はかかりますが、そのかかる時間も含めて楽しんでいます。
日々がサァーっと流れやすいし、特に歌曲だと1曲1曲が短く、その中にどんな色を入れるかを練らなくてはならないので、時間をかけることを大切にしています。

終わった後に「飲みに行こう!」で音楽会が終われば嬉しいです。
~出演公演~