HARUSAI JOURNAL春祭ジャーナル

春祭ジャーナル 2013/02/01

アーティスト・インタビュー
~高木和弘(ヴァイオリン/長岡京室内アンサンブル)

2011年の音楽祭に引き続き意欲的なプログラムで再登場する長岡京アンサンブル。 今回はメンバーの高木和弘さんに、指揮者をおかずに高いクオリティの演奏を届けるアンサンブルの魅力についてお話を伺いました。


takagikazuhiro2013.png 東京春際のStravinsky vol.2 ド・バナの「アポロ」、ベジャールの「春の祭典」■
clm_q.png  長岡京室内アンサンブルの特徴を教えてください
 人と合奏するときはどうしても目で見える、人が弾いている動作を頼りにアンサンブルをする場面があります。合わせることも必要ですが、音楽とは本来そうではなく純粋に音だけで構成されるべきである──長岡京室内アンサンブルとは、作品本来の持つ音楽の美しさを表現することを目指しているアンサンブルです。これが長岡京の特徴であり森悠子先生の指導方針の特徴で、僕も森先生の方針に影響を受けた1人です。

clm_q.png 指揮者を置かずに複数でアンサンブルするためにどのような練習を行っているのでしょうか
 指揮者がいない演奏では演奏家同士の"あうんの呼吸"が必要となります。従って練習方法もとてもユニークで視覚に頼らない練習を行います。
 ほかの奏者が見えないように背を向けて演奏してみると誰もキューを出せない。合わせるためには一人ひとりの感覚を集中させ、楽譜に書かれていることをメンバー全員が理解して共有していなくてはなりません。ボーイング一つでも変わってしまいます。それらが鍛錬されると、音楽の空気や気配、呼吸、高揚感というものは演奏で伝えることができるようになるのです。この感覚を鍛錬することはとても大切で、自分の指導する合奏団でも最近取り入れています。

clm_q.png 高木さんは若い室内アンサンブルのリーダーでもありますね
 長岡京で受けた教育がベースにあり、ここで習ったことから自分なりに工夫したり違った形を試してみたりしています。実際に合奏団をリーダーとして率いる立場になると難しく、森先生のすごさが分かりますね!

clm_q.png 今回のバレエとの共演というプログラムについてお聞かせください
 「ミューズを率いるアポロ」は長岡京で演奏しましたが、バレエとは初共演です。僕自身はバレエとの共演は経験していますし、リヨンに留学していた頃にダンサーの発表会で、ヴァイオリンを演奏しながら一緒に踊った機会がありました。バリバリの現代音楽を踊って弾くという(笑)とても貴重な経験でした。
 今回はダンサーと奏者が舞台上で共演するので、(ピットとは違って)互いに感じ合いながら演奏することができますし、それがお客さんにも伝わると思います。

clm_q.png 作品の魅力や聴きどころを教えてください
 この作品は、音楽に対してピュアになる長岡京の音楽作りにとても合っていると思います。古典的な手法や技法で骨組みがとてもよく見え、シンプルでありながら遠近法が用いられた音楽です。例えて言えば、モディリアーニの絵はデッサンがはっきり見えるので格好がいい、そんな感覚を覚えます。
 「アポロ」は、ストラヴィンスキーのほかの作品と比べて演奏される機会が割と少ないことや、バレエダンサーと同じ舞台上で演奏するスタイルも珍しいので、貴重な公演だと思います。そして、プログラムの後半がオーケストラによる「春の祭典」なので、前半と後半のコントラストも聴きものかもしれません。
 さらに聴きどころというと、僕たち10数人で大ホールという広い空間に音楽をどう伝えていくか、これは森先生もいろいろと試行錯誤していると思います。
 僕自身、演奏することはもちろんですが、バレエとの共演をとても楽しみにしています。そして、聴いていただく方が120%の舞台を楽しんで頂けるようにしたいと思います。


~出演公演~


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