春祭ジャーナル 2012/02/14
ようこそハルサイ〜クラシック音楽入門~
刺激的な街、パリに育てられたドビュッシーの音楽
[ドビュッシーとその時代]
文・オヤマダアツシ(音楽ライター)
映画『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズが大人気らしい。昭和33年を舞台にした第1作では、まだ建設途中で足だけが出現した東京タワーの姿も見ることができるが(もちろんCGである)、そんな時代の東京はもちろん知らない自分も不思議な感動をおぼえた。

エッフェル塔
1889年のパリ万博には、日本も含めたアジアからも多くの国や地域が出店・出品。ドビュッシーは友人のポール・デュカスらと連れだってジャワ(インドネシア)のガムラン音楽や、ヴェトナムの演劇などを鑑賞している。パリでの万国博覧会は1900年にも開催され、エッフェル塔の近くには世界各地の建築物(五重塔、モスク、アンコールワットなど)を大集合させたアミューズメントパークが出現。街のあちこちに各国のパヴィリオンが建設され、パリにいながら世界旅行体験ができるほどだったという。
ドビュッシーが生きた時代のパリはかくのごとく刺激的であり、多くのものからインスパイアされて音楽を生み出した。彼の音楽を聴きながら、その源泉が何であるのかを想像し、約1世紀前のパリに思いを馳せるのも一興だろう。音楽とはしばしば、妄想タイムトラヴェルの起動装置なのだから。
~関連公演~