PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2015-

東京春祭ディスカヴァリー・シリーズ vol.2ヤナーチェクーーないしょの手紙
〜こころを紡ぐ、ヤナーチェクからのラブレター

知られざる作曲家を紹介するシリーズ第二弾は、東欧のモラヴィア地方で生まれ、その民俗色に強い影響を受けたヤナーチェク。初期の作品から、晩年に綴った恋文まで、ベールに包まれた作曲家の深層を紐解きます。

プログラム詳細

2015:03:28:15:00:00

■日時・会場
2015.3.28 [土] 15:00開演(14:30開場)
上野学園 石橋メモリアルホール

■出演
ソプラノ:小林史子
ピアノ:寺嶋陸也、姫野真紀
クァルテット奥志賀
 ヴァイオリン:会田莉凡、小川響子
 ヴィオラ:七澤達哉
 チェロ:黒川実咲
お話・企画構成:中村 真

■曲目
ヤナーチェク:
 主題と変奏 《ズデンカ変奏曲》
 《モラヴィア舞曲集》 より
  6. 昔の踊り
  7. カラマイカ
 「発話旋律」によるピアノ小品
 《歌で辿るモラヴィア民俗詩》 より
 《歌で辿るフクヴァルディ民俗詩》 より
  コステルニチカのアリア (歌劇《イェヌーファ》 より)
 《草かげの小径にて 第1集》 より
  第1曲 われらの夕べ
  第3曲 一緒においで
  第5曲 彼女らはツバメのように喋りたてた
  第10曲 メンフクロウは飛び去らなかった
 《霧の中で》
 マクロプロスのフィナーレ (歌劇 《マクロプロス事件》 より)
 弦楽四重奏曲 第2番 《ないしょの手紙》
 

出演者

ソプラノ:小林史子 Soprano:Fumiko Kobayashi 愛知県立芸術大学大学院修了。ヴェルディ音楽院卒業。フランス音楽コンクール第1位、F.P.Neglia国際コンクール第3位、ヴィオッティ国際コンクール入選。第195回名古屋市民の劇場オペラ公演「ラ・ボエーム」のミミ役でオペラデビュー。その後、モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「コシ・ファン・トゥッテ」をはじめ「蝶々夫人」「椿姫」など、▼続きを見る多くのイタリアオペラに出演、オペラ歌手として活躍。またバッハ「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」やモーツァルト、ヴェルディ、ドヴォルザークの「レクイエム」などのソリストとしても多数のコンサートに出演。1999年、2000年、2010年NHK FMリサイタル出演。2001年テレビNHK名古屋ニューイヤーコンサートに出演。近年はレパートリーを大きく拡げ意欲的にコンサート活動を展開。モンテヴェルディなどを中心に古楽器アンサンブルとの演奏会、レスピーギ歌曲によるリサイタル、プッチーニ生誕150年記念リサイタル(名古屋ペンクラブ賞を受賞)、ドヴォルザーク、リゲティ、ファルカシュの作品による「ヨーロッパの東の風」、ヴェルディ生誕200年記念リサイタル「Omaggio a Verdi」など、いずれも好評を博す。セシルレコードよりCD「トスカーナの雨」を発売中。名古屋音楽大学、愛知県立芸術大学、金城学院大学非常勤講師。ABCアカデミー主催。 

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ソプラノ:小林史子 Soprano:Fumiko Kobayashi

ピアノ:寺嶋陸也 Piano:Rikuya Terashima 1964年生まれ。東京藝術大学音楽学部作曲科卒、同大学院修了。オペラシアターこんにゃく座での演奏や、1997年、東京都現代美術館でのポンピドー・コレクション展開催記念サティ連続コンサート「伝統の変装」、2003年パリ日本文化会館における作品個展「東洋・西洋の音楽の交流」等は高く評価された。▼続きを見る2006年にはタングルウッド音楽祭に招かれボストン交響楽団のメンバーと自作を含む室内楽を演奏。作曲の他、ピアノ演奏や指揮、音楽祭の音楽監督等、活動は多岐にわたる。オペラ《ガリレイの生涯》《末摘花》、カンタータ《伊邪那岐・伊邪那美》、合唱ファンタジア《オホホ島奇譚》《樹の奇・危・嬉~ピカソくんとうたおう》、ヴォードヴィル《タバコの害について》、《尺八・二十絃箏と管弦楽のための協奏曲》、合唱のための《詩篇第49番》《沖縄のスケッチ》、オーボエ・三味線と打楽器のための《異郷の景色》、古代復元楽器のための《大陸・半島・島》、朗読と筝、室内管弦楽のための《貝の火》他、作品多数。『大陸・半島・島/寺嶋陸也作品集』(ALCD-9026)、『二月から十一月への愛のうた(栗山文昭の芸術2/寺嶋陸也作品集)』(VICS-61092)その他、室内楽や歌曲のピアノ等、多くのCDがある。 作品はこれまで国内はもとよりイタリア、イギリス、フランス、オランダ、スペイン、アメリカ合衆国等でも演奏されている。

公式サイト "http://www.gregorio.jp/terashima/

©渡辺 力
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ピアノ:寺嶋陸也 Piano:Rikuya Terashima

ピアノ:姫野真紀 Piano:Maki Himeno 奈良市出身。京都市立芸術大学を卒業、同大学大学院修了。在学中よりソロ、室内楽の演奏活動をおこなうHolland Music Sessions、京都フランスアカデミー、浜松国際ピアノアカデミー等に参加。日本演奏連盟主催によるリサイタルをいずみホールにて開催。また大阪ザ・フェニックスホールのエヴォリューションシリーズに選定され、コンサート「東欧幻想」を開催。▼続きを見る岡田加津子、くりもとようこ、櫻井ゆかり各氏の作曲作品展で新作初演をおこなう。ソロ・リサイタルの他、「1コイン・コンサート」、美術作品とのコラボレーション「聴くかたち 見える音」などのコンサートを開催。アンサンブル奏者として、多治見少年少女合唱団他の合唱ピアニスト、京都フランスアカデミー、いこま音楽祭などの講習会伴奏、弦楽器・管楽器のリサイタル共演者をつとめる等、幅広い活動をおこなっている。柴田翠、岩淵洋子、古川五己、田原富子、阿部裕之、小坂圭太、北住淳、松村英臣の各氏に師事。

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ピアノ:姫野真紀 Piano:Maki Himeno

クァルテット奥志賀 東京藝術大学、桐朋学園大学を卒業、在学中のメンバーが、小澤国際室内楽アカデミー奥志賀にて出会い、研鑽を積み、より深くクァルテットを学び続けたいという気持ちから、2014年に結成。プロジェクトQ第12章に出演。東京オペラシティコンサートホール、奥志賀高原・森の音楽堂、奥志賀高原ホテルなどで演奏。これまでに小澤征爾、原田禎夫、小栗まち絵、川本嘉子、川崎洋介の各氏から指導を受ける。

ヴァイオリン:会田莉凡 1990年東京都出身。桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコース修了。5歳よりヴァイオリンを始め、岩澤麻子、鷲見健彰の各氏に師事。2010年第6回ルーマニア国際音楽コンクール弦楽器部門第1位、併せて全部門グランプリを獲得。翌年に、ルーマニアの首都ブカレスト、シナイヤ、ブルラド、プロイエシュティにてコンサートツアーを行う。▼続きを見る2012年第81回日本音楽コンクールバイオリン部門第1位、併せて全部門の中で最も印象的だった演奏に贈られる、増沢賞、レウカディア賞、黒柳賞、鷲見賞を受賞。2014年第3回秋吉台音楽コンクール室内楽部門第1位(審査員満場一致)。これまでに、ルーマニア国立ラジオオーケストラ、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、セントラル愛知交響楽団、群馬交響楽団、大阪交響楽団などと共演。東京・春・音楽祭、CHANELネクサスホールなどでのリサイタルの他、別府アルゲリッチ音楽祭、びわ湖ジルベスターコンサートにソリストとして、宮崎国際音楽祭、武生国際音楽祭、サイトウ・キネン・オーケストラ、水戸室内管弦楽団などに参加。国際音楽セミナー「ミュージック・マスターズ・コース・ジャパン」にてアラン・ギルバート、大友直人の各氏より指導を受ける。小澤国際室内楽アカデミー2011~2014に参加、弦楽合奏では小澤征爾氏の指揮の下、ソリスト、コンサートミストレスを務めた。2014年に「クァルテット奥志賀」を結成。プロジェクトQ第12章に出演、東京オペラシティコンサートホール、奥志賀高原・森の音楽堂などで演奏。 また群馬交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団のゲストコンサートミストレスを務める。NHK-Eテレ「ららら♪クラシック」、NHK-BS「クラシック倶楽部」、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」などに出演。現在、徳永二男氏に師事。 室内楽では小澤征爾、原田禎夫、小栗まち絵、川本嘉子、川崎洋介の各氏から指導を受ける。

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ヴァイオリン:会田莉凡

ヴァイオリン:小川響子 1992年奈良県出身。東京藝術大学4年在学中。5歳よりヴァイオリンを始める。第60回全日本学生音楽コンクールヴァイオリン部門中学生の部、大阪大会第1位、全国大会第2位。2012年第10回東京音楽コンクール弦楽部門第1位、及び聴衆賞を受賞。モーツァルト国際室内楽コンクール2013第3位。第2回デザインK国際コンクール2重奏部門、山中惇史氏とのデュオで第1位受賞。▼続きを見る南仏、サン・ジャン・ド・リュズでの国際ラヴェル音楽アカデミーにて、レジス・パスキエ氏に師事。ボナ美術館賞を受賞。いしかわミュージックアカデミーにてIMA奨励賞を受賞。京都フランス音楽アカデミーにて、優秀生徒による受講者演奏会に出演。ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンのマスタークラスにてジェラール・プーレ氏のレッスンを受講。佐渡裕とスーパーキッズオーケストラ、小澤国際室内楽アカデミー奥志賀、リゾナーレ室内楽セミナーに参加。これまでに、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、神戸市室内合奏団、関西フィルハーモニー管弦楽団、他オーケストラと共演。また、小澤征爾氏とバッハのドッペルコンチェルトを共演。サイトウ・キネン・オーケストラに参加。JTが育てるアンサンブルシリーズ、藝大定期室内楽、藝大モーニングコンサート、東京文化会館モーニングコンサート、軽井沢大賀ホール春の音楽祭2014、中之島国際音楽祭、ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン、国立科学博物館まちなかコンサート、金沢駅ミニコンサートなどに出演。また、 文化庁派遣事業にて保育園や学校でもアウトリーチ活動も行っている。 これまでにヴァイオリンを塩谷峰子、西和田ゆう、漆原朝子、原田幸一郎の各氏に、室内楽を山崎伸子、大関博明、上森祥平、松原勝也、川崎和憲、山崎貴子、川本嘉子、原田禎夫の各氏に、ヴィオラを市坪俊彦氏に師事。 Quartet Arpa、クァルテット奥志賀のメンバーとしても活動している。サントリーホール室内楽アカデミー第3期フェロー

ヴァイオリン:小川響子

ヴィオラ:七澤達哉 1990年東京都出身。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、東京芸術大学卒業。高校入学を機にヴィオラに転向。同年よりカルテットN、アンサンブルソノールのヴィオラ奏者として活動。2011年第12回大阪国際音楽コンクール アンサンブル部門第1位、併せて神戸市長賞受賞。2014年第2回宗次ホール弦楽四重奏コンクール第2位受賞。小澤国際室内楽アカデミー奥志賀2010~2014、サイトウ・キネン・オーケストラ子供のための音楽会等に参加。これまでにヴィオラを川本嘉子氏、川崎和憲氏、市坪俊彦氏に師事。

ヴィオラ:七澤達哉

チェロ:黒川実咲 1991年愛知県出身。愛知県立明和高等学校音楽科、桐朋学園大学音楽学部卒業。第9回泉の森ジュニアチェロコンクール高校生以上の部金賞。第67回全日本学生音楽コンクールチェロ部門大学の部第2位。桐朋学園オーケストラとして、ラ・フォル・ジュルネ音楽祭、別府アルゲリッチ音楽祭に参加。2012年より、小澤国際室内楽アカデミー奥志賀、小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト、、▼続きを見る小澤征爾音楽塾オーケストラ・プロジェクトサイトウ・キネン・フェスティバルに塾生として参加。草加市国際ハープフェスティバル2013にて、ハープ奏者マリオ・ファルカオとチェロとハープのデュオを共演(日本初演)。桐朋学園大学卒業演奏会、読売中部新人演奏会、NHK交響楽団のエキストラ奏者出演他、宗次ホールランチタイムコンサートやソロ、室内楽の演奏会に出演。これまでに室内楽を藤井一興、佐々木亮、徳永二男、堤剛、チェロを中島顕、倉田澄子の各氏に師事。イーゴリ・ガブリッシュ、ロラン・ピドゥ、マリオ・ブルネロ、ルイス・クラレット、フランス・ヘルメルソンの各氏のマスタークラスを受ける。現在、山崎伸子に師事。

チェロ:黒川実咲

■曲目解説

レオシュ・ヤナーチェク(1854-1928)は生涯に 3000 を超える民謡を収集した。そのなかから 53 曲を選んで、ピアノ 伴奏付きの歌曲集としてまとめたのが 《 歌で辿るモラヴィア民俗詩》(1892-1901)である。

ライプツィヒ音楽院で学んでいた頃に書かれた 《 ズデンカ変奏曲》(1880)は、初期を代表する作品。穏やかで静謐 な調子の主題に 7 つの変奏が続く。当時、恋仲にあり、のちにヤナーチェクの妻となるズデンカ・シュルツォヴァーの 名が愛称としてつけられた。

1886 年、ヤナーチェクは民俗音楽を研究していたフランチシェク・バルトシュとともに民謡の調査・収集を始める。 特に故郷モラヴィアの民謡に関心を寄せ、自由なリズムと旋律に魅せられた。その研究成果の一つとも言える 《 モラ ヴィア舞曲集》(全 3 巻計 21 曲)は 1888 年から 91 年にかけてまとめられた。今回演奏される 2 曲を含む第 3 巻は、ピアノ独奏やピアノ伴奏付き歌曲等、全 9 曲からなる。

1897 年以降、ヤナーチェクは行く先々で旋律の素材を小さな手帳に書き溜めた。「発話旋律」によるピアノ小品は、 そうしたフィールドワークの見本帳である。

《歌で辿るフクヴァルディ民俗詩》(1898)は、ヤナーチェクが生まれたモラヴィア北部の小さな村フクヴァルディの 13 の民謡を集めたピアノ伴奏付きの歌曲集である。

女性作家ガブリエラ・プライソヴァーの戯曲をもとにした歌劇《イェヌーファ》(1903)は、ヤナーチェクの民謡研究の 成果が結実した大作。敬虔なキリスト教徒で倫理的に厳格なコステルニチカ(主人公イェヌーファの継母)は、イェヌ ーファが身ごもった私生児を秘かに殺めることを決意する。「コステルニチカのアリア」は、第 2 幕の緊迫した場面で歌 われる凄惨なアリアである。

《草かげの小径にて 第 1 集》(1900-11)の「小径」とは、古い記憶につながる故郷の道。第 1 曲「われらの夕べ」は穏やかな楽想のうちに一抹のほろ苦さが感じられる。第 3 曲「一緒においで」は短いながらも、明るい主題がふとした瞬間にその表情を変える。第 5 曲「彼女らはつばめのように喋りたてた」も短い曲だが、鳥の声にみたてたお喋りの描写がリアル。本曲集の白眉とも言えるのが第 10 曲「メンフクロウは飛び去らなかった」。古い迷信でフクロウは死の先触れとされており、実際、作曲時に愛娘オルガが瀕死の状態にあった。曲中で 2 つの主題が希望と絶望を象徴する かのように交錯する。

《霧の中で》 は 1912 年に書かれた作品。第 1 曲は、故郷の風景を母体としたような幻想的な楽想。第 2 曲には、忘れかけていた古い歌を口ずさむような微妙な不安定さがある。第 3 曲は、遠い追憶から童心に帰ったような歓びが感じられ、第 4 曲では、胸中に湧いた様々な感情を吟味するようなドラマティックな展開を経て、全曲が閉じられる。 1925 年に完成した歌劇 《 マクロプロス事件》 は、長寿の秘薬をめぐる物語。カレル・チャペックの戯曲にほれ込んだヤナーチェクが自ら台本を執筆した。フィナーレではマクロプロス家の秘密が明かされたのち、主人公エミリア・マルティ(エリナ・マクロプロス)が 300 年以上生きた人間の虚無を一同に語りかける。この「マクロプロスのフィナーレ」の 場面は、劇中で最高度の緊張を孕んだシーンとなる。

ヤナーチェク晩年の傑作群を生み出す原動力となったのは、1917 年夏に知り合った 38 歳年下の人妻カミラ・シュ テスロヴァーだった。弦楽四重奏曲第 2 番《 ないしょの手紙》(1928)の「ないしょの手紙」とは、シュテスロヴァーに宛 てた恋文のこと。生前、ヤナーチェクは彼女に 600 通以上の恋文を書き送っている。全 4 楽章を通じて、恋にまつわ る細やかな情景が描かれ、まるで眼前にひと幕のオペラを見るような心地にさせられる。


主催:東京・春・音楽祭実行委員会 特別協力:上野学園 石橋メモリアルホール

※掲載の曲目は当日の演奏順とは異なる可能性がございます。
※未就学児のご入場はご遠慮いただいております。
※やむを得ぬ事情により内容に変更が生じる可能性がございますが、出演者・曲目変更による払い戻しは致しませんので、あらかじめご了承願います。
※チケット金額はすべて消費税込みの価格を表示しています。
※ネットオークションなどによるチケットの転売はお断りいたします。

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