PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2012-

にほんのうたⅡ~東京オペラシンガーズ
~合唱で聴く美しい日本の歌

プログラム詳細

Photo:ヒダキトモコ
■日時・会場
2012.
3.21 [水] 14:00開演(13:30開場)
3.21 [水] 19:00開演(18:30開場)[各回約60分]
※ この公演は終了いたしました。
旧東京音楽学校奏楽堂

■出演
合唱:東京オペラシンガーズ
  ソプラノ:駒井ゆり子、斎藤紀子、永﨑京子
  アルト:安本ゆか、三宮美穂、橋本恵子
  テノール:土崎 譲、真野郁夫、与儀 巧
  バス:寺本知生、成田 眞、藪内俊弥
指揮:宮松重紀
ピアノ:寺嶋陸也
ナビゲーター:好本 惠

■曲目
ローレライ
 :H.ハイネ・作詞/近藤朔風・訳詞/P.F.ジルヒャー・作曲(若林千春・編曲)

野ばら
 :J.W.ゲーテ・作詞/近藤朔風・訳詞/H.ウェルナー・作曲(若林千春・編曲)

故郷の空(スコットランド民謡)
 :R.バーンズ・作詞/大和田建樹・作詞/作曲不詳(寺嶋陸也・編曲)

才女(スコットランド民謡)
 :W.ダグラス・作詞/里見 義・訳詞/J.D.スコット夫人・作曲(寺嶋陸也・編曲)

春の日の花と輝く(アイルランド民謡)
 :T.ムーア・作詞/堀内敬三・訳詞/作曲不詳(若林千春・編曲)

故郷を離るる歌(ドイツ民謡/文部省唱歌)
 :作詞不詳/吉丸一昌・訳詞/作曲不詳(若林千春・編曲)

羽衣:鳥居 忱・作詞/M.ハウプトマン・作曲
さくら(日本古謡):作詞不詳/作曲不詳(中田喜直・編曲)
春の小川(文部省唱歌)
 :高野辰之・作詞/岡野貞一・作曲(源田俊一郎・編曲)
鯉のぼり(文部省唱歌):作詞不詳/弘田龍太郎・作曲(源田俊一郎・編曲)
夏は来ぬ:佐佐木信綱・作詞/小山作之助・作曲(飯沼信義・編曲)
夏の思い出:江間章子・作詞/中田喜直・作曲(中田喜直・編曲)
里の秋:斎藤信夫・作詞/海沼 實・作曲(平吉毅州・編曲)
小さい秋見つけた:サトウハチロー・作詞/中田喜直・作曲(中田喜直・編曲)
たきび:巽 聖歌・作詞/渡辺 茂・作曲(平吉毅州・編曲)
雪の降る街を:内村直也・作詞/中田喜直・作曲(中田喜直・編曲)
田 章 早春賦:吉丸一昌・作詞/中・作曲(林 光・編曲・編曲)
[アンコール]
花、仰げば尊し


出演者

合唱:東京オペラシンガーズ Chorus:Tokyo Opera Singers 1992年、小澤征爾指揮、蜷川幸雄演出で話題を呼んだ《さまよえるオランダ人》の公演に際して、世界的水準のコーラスをという小澤氏の要望により、東京を中心に活躍する中堅、若手の声楽家によって組織された。当公演の合唱は圧倒的な成果を上げ、各方面から絶賛を受けた。
その評価により同年、第1回サイトウ・キネン・フェスティバル松本《エディプス王》、バイエルン国立歌劇場日本公演《さまよえるオランダ人》(ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮)に招かれ、再び高い評価を得た。
翌1993年から活動は本格化し、サイトウ・キネン・フェスティバル松本(2009年まで連続出演)、東京フィルハーモニー交響楽団主催コンサート(出演したオペラコンチェルタンテ・シリーズ「ヒンデミット3部作:大野和士指揮」は文化庁芸術祭大賞受賞)、東京・春・音楽祭等を活動の中心に置く他、ベルリン・コーミッシェ・オーパー、キーロフ歌劇場管弦楽団(ヴァレリー・ゲルギエフ指揮)、サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団(ユーリ・テミルカーノフ指揮)、イタリア国立放送交響楽団等の来日公演に出演、音楽界の活性化に大きく貢献することとなった。1998年には長野冬季オリンピック開会式において、世界6カ国を結ぶ《第九》合唱で、中心となる日本側の演奏を担当した。1999年にはヨーロッパの代表的音楽祭の一つであるエディンバラ音楽祭に出演(東急文化村制作《トゥーランドット》)、最大級の賞賛を得た。2000/01年ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と共演(小澤征爾、サイモン・ラトル指揮)、同楽団からも高い評価を得た。
東京・春・音楽祭には、東京のオペラの森合唱団として第1回から連続出演。2006/07、2010年に共演したリッカルド・ムーティ(ヴェルディ《レクイエム》、オルフ《カルミナ・ブラーナ》他)からも高い評価を得ている。2010年からスタートした東京春祭ワーグナー・シリーズ《パルジファル》にも出演、好評を得た。2011年には主要メンバーによる「にほんのうた」シリーズを開始。また急遽開催されたズービン・メータ指揮《第九》(東日本大震災被災者支援チャリティーコンサート)にも出演、当公演は大きな感動を呼んだ。

指揮:宮松重紀 Conductor:Shigeki Miyamatsu 1963年、横浜生まれ。横浜国立大学教育人間科学部を卒業後、東京藝術大学指揮科を1991年、首席にて卒業する。指揮を山田一雄、遠藤雅古の各氏に師事。1989年には、イタリアのキジアーナ音楽院に学び、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキーに師事。東京二期会や日生劇場等のオペラ公演に副指揮として携わり、小澤征爾、若杉弘、外山雄三等のもとで研鑽を積む。
1989年、新星日本交響楽団を指揮してデビュー。1992年、東京オペラ・プロデュース公演《ドン・ジョヴァンニ》でオペラデビュー。以来、東京フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、読売日本交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、群馬交響楽団、広島交響楽団、大阪センチュリー交響楽団等を数多く指揮し、いずれも高い評価を得た。特に東京フィルハーモニー交響楽団との関係は長く、新星日本交響楽団時代を含めると、指揮した演奏会は100を超えている。
また、オペラ公演では新国立劇場や二期会を始め、横浜シティオペラ、関西二期会等、全国各地でのオペラ公演も数多く指揮。様々な演出家、歌手とともに多数の公演を上演し、多くの信頼を得ている。特に2001年、新国立劇場主催公演《花言葉》(ロッセリーニ作曲)では「大きな流れと繊細さを併せ持つ指揮者」(日本経済新聞)「歌手を自由にさせながら、オーケストラを歌わせる能力に舌を巻く」(『音楽の友』)と絶賛される。知られざるオペラの発掘にも意欲的で、《サーカスの女王》(カールマン作曲)《やきもち亭主》(ペルゴレージ作曲)を日本初演している。近年では2008年に渡伊、ミラノ・スカラ座にて研修。スカラ座公演、大野和士指揮《マクベス》に携わり、アシスタントを務める。
合唱指揮者としても絶大な信頼を得ており、日本における重要な公演に数多く携わっている。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演(2000年、小澤征爾指揮)、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団(2006年ユーリ・テミルカーノフ指揮)、東京のオペラの森管弦楽団(2006/07年リッカルド・ムーティ指揮)、その他NHK交響楽団、東京都交響楽団、読売日本交響楽団の定期演奏会等に客演する。サイトウ・キネン・フェスティバル松本では、2000年のバッハ《ロ短調ミサ》の公演以来、長年に渡り合唱指導の責任を担っている。また東京オペラシンガーズとの関係も大変深く、東日本大震災チャリティー・コンサート《第九》(ズービン・メータ指揮NHK交響楽団)を始め、数多くの公演を成功へと導いている。東京混声合唱団のコンダクター・イン・レジデンスも務める。
ピアニストとしても、東京フィルハーモニー交響楽団、読売日本交響楽団のメンバーとサロンコンサートを行い、歌手のリサイタル伴奏を続けており、「劇的な表現にもかかわらず歌手と一つに溶け合う」(神奈川新聞)と評される。2008年、広島市民オーケストラと自身の弾き振りで、モーツァルト《ピアノ協奏曲第24番ハ短調》を演奏し絶賛された。また、編曲の活動も行っており、作品は自身の指揮で新星日本交響楽団や東京交響楽団で演奏された。クラシック以外にも活動を広げており、小椋佳、チャゲ&飛鳥、小松亮太(バンドネオン)、藤原道山(尺八)とのコラボレーションや、東京フィルハーモニー交響楽団によるアニメ音楽のCDを発売(エイベックス)している。
現在、母校である横浜国立大学、東京音楽大学指揮科の講師として、後進の育成に情熱を注いでいる。

指揮:宮松重紀 Conductor:Shigeki Miyamatsu

ピアノ:寺嶋陸也 Piano:Rikuya Terashima 1964年生まれ。東京藝術大学音楽学部作曲科卒、同大学院修了。オペラシアターこんにゃく座での演奏や、1997年、東京都現代美術館でのポンピドー・コレクション展開催記念サティ連続コンサート「伝統の変装」、2003年パリ日本文化会館における作品個展「東洋・西洋の音楽の交流」等は高く評価された。2006年にはタングルウッド音楽祭に招かれボストン交響楽団のメンバーと自作を含む室内楽を演奏。作曲の他、ピアノ演奏や指揮、音楽祭の音楽監督等、活動は多岐にわたる。オペラ《ガリレイの生涯》《末摘花》、カンタータ《伊邪那岐・伊邪那美》、合唱ファンタジア《オホホ島奇譚》《樹の奇・危・嬉~ピカソくんとうたおう》、ヴォードヴィル《タバコの害について》、《尺八・二十絃箏と管弦楽のための協奏曲》、合唱のための《詩篇第49番》《沖縄のスケッチ》、オーボエ・三味線と打楽器のための《異郷の景色》、古代復元楽器のための《大陸・半島・島》、朗読と筝、室内管弦楽のための《貝の火》他、作品多数。『大陸・半島・島/寺嶋陸也作品集』(ALCD-9026)、『二月から十一月への愛のうた(栗山文昭の芸術2/寺嶋陸也作品集)』(VICS-61092)その他、室内楽や歌曲のピアノ等、多くのCDがある。
作品はこれまで国内はもとよりイタリア、イギリス、フランス、オランダ、スペイン、アメリカ合衆国等でも演奏されている。

公式サイト http://www.gregorio.jp/terashima/

ピアノ:寺嶋陸也 Piano:Rikuya Terashima

ナビゲーター:好本 惠 Navigator:Megumi Yoshimoto 1954年、東京都出身。1976年、東京女子大学卒。同年、NHK入局。1981年からフリーアナウンサー。「きょうの料理」「すくすく赤ちゃん」「NHK俳壇」「ペット相談」等で司会者として活躍。現在、医療、健康、暮らし等をテーマにシンポジウムのコーディネーターも務める。十文字学園女子大学客員教授。立正大学、NHK文化センタ-の講師。2010年9月、「ことばの杜」に7人目のメンバーとして参画。

ナビゲーター:好本 惠 Navigator:Megumi Yoshimoto

■曲目解説

ローレライ
フリードリヒ・ジルヒャーはドイツの作曲家で、多くの合唱曲を残した。なかでもハインリヒ・ハイネの詩による《ローレライ》は、近藤朔風の訳詞で『女性唱歌』(1909)に収められ、日本にジルヒャーの名を知らしめた。ライン川に住むとされる水の精ローレライの美しさと、舟人を誘惑し難破させるその魔性が歌われている。

野ばら
ドイツの作曲家ハインリヒ・ウェルナーによる《野ばら》は1829年の作曲。シューベルトの同名歌曲と同様にゲーテの詩を用いている。この作品も日本では近藤朔風の訳詞により広く知られることとなった。

故郷の空
スコットランドを代表する詩人ロバート・バーンズは、《蛍の光》の原詩を書いた詩人としても知られる。《故郷の空》は本来、『ライ麦畑で出会うとき』という詩に付曲されたものだが、大和田建樹により新たな歌詞が付けられ、『明治唱歌』(1888)に収録された。原詩は麦畑における男女の戯れを描いているのに対し、大和田版は故郷から離れて暮らす者の郷愁を歌っている。

才女
原曲は、ウィリアム・ダグラスの詩をもとに、スコット夫人が1838年に作曲したスコットランドの代表的な民謡。ダグラスが求愛した、貴族の娘アニー・ローリーへの思いが切々と歌われる。

春の日の花と輝く
歌詞は『夏の名残りの薔薇(庭の千草)』などで知られるアイルランドの国民的詩人トーマス・ムーアによる。若人の儚さと、真実の愛に対する思いが込められている。

故郷を離るる歌
本曲は、『新作唱歌 第5集』(1913)に収められ、日本の音楽教育の第一人者・吉丸一昌の訳詞で広く親しまれるようになった。故郷の美しい自然を思い、かの地との別れを惜しむ様子が感動を誘う。

羽衣
鳥居忱と言えば、瀧廉太郎作曲の《箱根八里》の作詞者として知られている。一方、作曲者のモーリッツ・ハウプトマンは、ドレスデンに生まれ、19世紀に活躍したドイツの音楽家である。

さくら
日本古謡として知られる《さくら》は、もともと幕末に子供のための箏の手ほどき歌として作曲された。その後、美しく日本的なメロディが人気を集め、現在の歌詞が付けられた。

春の小川
『尋常小学唱歌 第四学年用』(1912)に収められた《春の小川》は、2回ほど歌詞が改変されたため、その内容には若干異なる部分が見られる。しかし、いずれの詞でも、春の小川の美しい風景が歌われていることに変わりはない。

鯉のぼり
《鯉のぼり》は弘田龍太郎の作曲で、『尋常小学唱歌 第五学年用』(1913)に採用された。「屋根より高い~」の出だしで知られる近藤宮子作詞の同名作品が純粋に楽しげな童謡であるのに対し、こちらは風になびく鯉のぼりに子供の成長を願う思いが込められている。

夏は来ぬ
『新編教育唱歌集(第五集)』(1896)に発表された一篇。小山作之助の曲が先にでき、佐佐木信綱がそのメロディに沿って作詞したと言われている。初夏の風景を日本の古典文学を思わせる言葉で表現した歌詞には、味わい深いものがある。

夏の思い出
作詞・江間章子、作曲・中田喜直という名コンビによる《夏の思い出》は、1949年に石井好子の歌でラジオ放送され、国民の心を掴んだ。夏の尾瀬の美しさを優美なメロディで表現した本曲は、音楽の教科書にも掲載され、現在まで歌い継がれている。

里の秋
斎藤信夫の作詞、海沼實の作曲による《里の秋》は、1945年12月24日に童謡歌手・川田正子の新曲として全国放送された。戦後の厳しい社会情勢に癒しと希望を与えたその歌は、放送直後から多くの反響を呼び、1948年にレコード化された。

小さい秋見つけた
《うれしいひなまつり》他で知られるサトウハチローの作詞、中田喜直の作曲による《小さい秋見つけた》は、1955年、NHKの特別番組のために作られた。その後1962年にボニージャックスの歌でレコード化されると大ヒットを記録し、同年の日本レコード大賞童謡賞に輝いた。

たきび
巽聖歌の作詞、《ふしぎなポケット》で有名な渡辺茂の作曲による《たきび》は、1941年にラジオで発表された。歌詞は、当時、巽が住んでいた東京都中野区上高田の風景を描いたとされ、その内容に感銘を受けた渡辺がわずかな時間で曲を付けたという逸話が残っている。

雪の降る街を
劇作家・内村直也が書いた連続ラジオ劇『えり子とともに』の挿入歌として内村自身が作詞、中田喜直が付曲して1951年に発表された。しんしんと降る雪を表現したメロディは、中田が山形県鶴岡市で見た風景をもとにしているとされ、現在でも毎年2月に開催される「鶴岡音楽祭」のフィナーレで歌われている。

早春賦
1913年発表の『新作唱歌 第3集』に収められて以降、我が国を代表する唱歌の一つとして愛されている。長野県大町市や安曇野周辺の初春を描いた歌詞は吉丸一昌、素朴で美しいメロディは中田章による。



主催:東京・春・音楽祭実行委員会 後援:公益財団法人台東区芸術文化財団

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