PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2012-

広瀬悦子 ピアノ・リサイタル
~同時代を生きた3人の作曲家たちへ―

プログラム詳細

Photo:青柳 聡
■日時・会場
2012.3.22 [木] 19:00開演(18:30開場)※ この公演は終了いたしました。
上野学園 石橋メモリアルホール

■出演
ピアノ:広瀬悦子

■曲目
ショパン:
 ノクターン 第5番 嬰へ長調 op.15-2 speaker.gif[試聴]
 バラード 第3番 変イ長調 op.47 speaker.gif[試聴]
アルカン:《悲愴的な様式による3曲》op.15 より「風」
ショパン:ノクターン 第4番 ヘ長調 op.15-1 speaker.gif[試聴]
アルカン:練習曲《鉄道》 op.27 speaker.gif[試聴]
ショパン:バラード 第1番 ト短調 op.23 speaker.gif[試聴]
ロッシーニ(リスト編):《ウィリアム・テル》序曲 speaker.gif[試聴]
リスト:
 《巡礼の年 第2年 イタリア》S.161 より「物思いに沈む人」 speaker.gif[試聴]
 「ヴェネツィアとナポリ」(《巡礼の年 第2年 イタリア》補遺)speaker.gif[試聴]
   1. ゴンドラの漕ぎ手
   2. カンツォーネ
   3. タランテラ
[アンコール]
ショパン:
 3つの新しい練習曲 第3番 変イ長調
 練習曲 op.25 第11番 イ短調「木枯らし」

【試聴について】
speaker.gif[試聴]をクリックすると外部のウェブサイト「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」へ移動し、
プログラム楽曲の冒頭部分を試聴いただけます。
ただし試聴音源の演奏は、「東京・春・音楽祭」の出演者および一部楽曲で編成が異なります。


出演者

ピアノ:広瀬悦子 Piano:Etsuko Hirose 3歳から才能教育研究会でピアノを始め、僅か6歳でモーツァルト《ピアノ協奏曲第26番「戴冠式」》を演奏、1987/88年に同研究会から1ヵ月間アメリカ演奏旅行に派遣される。1992年モスクワ・ショパン青少年国際ピアノコンクール優勝、日本と台湾で十数回のリサイタルを開く。1994年パリ・エコールノルマル音楽院に入学。1996年、同音楽院最高課程を首席で卒業後、パリ国立高等音楽院に入学。1999年、同音楽院を審査員全員一致の首席で卒業し、併せてダニエル・マーニュ賞を受賞。
ヴィオッティ国際音楽コンクールとミュンヘン国際音楽コンクールに入賞後、1999年マルタ・アルゲリッチ国際ピアノコンクールで優勝。以来、日本、フランス、アルゼンチン、ポーランド、イタリア等でリサイタルを開催。パリ・ショパンフェスティバル、ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ音楽祭、ラ・フォル・ジュルネ(ナント、日本、ワルシャワ)、CIMA音楽祭、カンヌ音楽祭、オランピア劇場でのラジオ・クラシック・フェスティバル、ノーアン音楽祭、 別府アルゲリッチ音楽祭、ドゥシニキ国際ショパン音楽祭、台北アルゲリッチ音楽祭等に出演。
2001年シャルル・デュトワ指揮NHK交響楽団と共演して日本でのオーケストラ・デビューを果たす。その他、バイエルン放送交響楽団、モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団、アルゼンチン国立交響楽団、トリノ国立管弦楽団、コレギウム・ムジクム・バーゼル、オーケストラ・アンサンブル金沢、読売日本交響楽団、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、広島交響楽団、群馬交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団他、国内外のオーケストラと数多く共演。2003年6月にオルフェウス室内管弦楽団の日本ツアーにソリストとして参加。2007年4月、ワシントンD.C.のジョン・F・ケネディセンターでリサイタルを行って全米デビューを飾り、その模様が世界中にインターネット中継された。2010年にはフランスにてシューマンのピアノ協奏曲をネルソン・フレイレの代役で数回演奏し、大成功を収めた。
2004年2月、コロムビアからデビューCD『シャコンヌ』をリリース、「見事な技巧と叙情的歌い回し。期待の新星ピアニスト」(『レコード芸術』)と絶賛される。続いて、『ラ・ヴァルス』『ファンタジー』『Le Vent』をリリース。2010年には5枚目のCD『Chopin:Ballades & Nocturnes』が、フランスのレーベル「MIRARE」から初の日本人アーティストのディスクとして世界的に発売される。また、続いて同レーベルから、オーケストラ・ドゥ・ポーと『シューマン&リスト』のピアノ協奏曲をリリースした。 ピアノを星洋子、中島和彦、中沖玲子、G.ムニエ、B.リグット、M.F.ビュッケ、J.シャミネ、A.ブレンデルの各氏に、室内楽をC.イヴァルディ氏に師事。スケールの大きな音楽作り、美しい音色、幅広いレパートリーが高い評価を集め、世界に活躍の場を広げる期待のピアニストである。

©A. Muto

ピアノ:広瀬悦子 Piano:Etsuko Hirose

■曲目解説

ショパン:ノクターン 第4番 ヘ長調 op.15-1、ノクターン 第5番 嬰へ長調 op.15-2
アイルランドの作曲家ジョン・フィールド(1782-1837)によって創始されたノクターン(夜想曲)という形式は、ショパンにより独自のスタイルに発展し、21曲の名作として結実した。
ノクターン第4番ヘ長調 op.15-1は、同第5番と第6番と合わせて一つの作品となっている。この第4番は、優雅さと激情のコントラストが素晴らしい。続くノクターン第5番嬰へ長調 op.15-2は、装飾音を巧みに用いて、歌心に満ちた、情緒豊かな作品となっている。
いずれの作品も1830年春から翌年にかけて作曲。ドイツの作曲家であるフェルディナンド・ヒラー(1811-1885)に献呈されている。

ショパン:バラード 第1番 ト短調 op.23、バラード 第3番 変イ長調 op.47
ショパンは4曲のバラードによって、新たな形式と音楽的世界を創り出した。その第1番は1831年から1835年にかけて作曲、ポーランドの詩人アダム・ミツキェヴィッツ(1798-1855)の詩「コンラード・ワーレンロッド」に着想を得たといわれている。当時シューマンはこの作品について、「ショパンの最も粗野な、もっとも独創味に富んだ作品」と手紙で書き残している。出版は1836年、ストックハウゼン男爵に献呈された。
第3番は1840年から翌夏にかけて作曲された。これもまたミツキェヴィッツの詩「水の精」に着想を得たとされる。他のバラード3曲に比べ、全体的に軽快かつ華麗な趣がある。出版は1842年、ポーリヌ・ドゥ・ノアイユ嬢に献呈された。

アルカン:《悲愴的な様式による3曲》op.15 より「風」、練習曲《鉄道》 op.27
フランスのピアニストで作曲家でもあったアルカン(本名シャルル・アンリ・ヴァランタン・モランジュ)(1813-1888)は、かのリストも恐れたほどの天才ピアニストで、今回演奏される2作品にも、その超絶技巧がいかんなく発揮されている。
《悲愴的な様式による3曲》op.15は1837年に出版、そのあまりに技巧的な作風は、シューマンから「非芸術的」と酷評された。「風」は、低音域のトリルから始まり、荒れ狂った風のようにめまぐるしく動く半音階と、やや感傷的なメロディが彼独自の世界を感じさせる。
「風」で聴かれるアルカンの超絶技巧は、練習曲《鉄道》でも凄まじいほどに表現されている。冒頭にVivacissimamente(極めて活発に)と書かれ、機関車の動きを表現するかのような激しい同音連打と素早い音階は、指定通りのテンポで演奏するのは非常に困難であり、有名ではあるが演奏される機会が少ない作品である。

ロッシーニ(リスト編):《ウィリアム・テル》序曲
当時最高の技術を誇るピアニストであったリストは、その技巧を誇示すべく(ギリシャを除いた)ヨーロッパ全域でリサイタルを開催したといわれている。そして、そのレパートリーとして、彼は他の作曲家の作品を300曲以上も編曲して演奏したとされる。
今回演奏される《ウィリアム・テル》序曲もその一つで、ロッシーニの名曲を決して技巧の誇示に走ることなく、ピアノによってオーケストラ作品のダイナミックなイメージを表現している。

リスト:
《巡礼の年 第2年 イタリア》より「物思いに沈む人」
「ヴェネツィアとナポリ」(《巡礼の年 第2年 イタリア》補遺)
《巡礼の年》は、リストが旅の最中で経験したことや印象などを、音楽として書き綴った全3集のピアノ独奏曲集。一連の作品は20代から60代にかけて作曲されたため、作風の変遷が見受けられる。
「物思いに沈む人」は、1837年から1849年にかけて作曲された《巡礼の年 第2年 イタリア》の第2曲。フィレンツェの名門メディチ家の墓にミケランジェロが刻んだ二つの肖像から霊感を得て作曲された。
「ヴェネツィアとナポリ」は1859年の作曲。それぞれの地にゆかりを持つメロディに基づいた作品で、「ゴンドラを漕ぐ女」「カンツォーネ」「タランテラ」(ナポリ地方の舞曲)からなる。



主催:東京・春・音楽祭実行委員会 特別協力:上野学園 石橋メモリアルホール

ページの先頭へ戻る