PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2012-

アルゼンチン・タンゴの夕べ
~哀愁漂うタンゴの名曲を集めて

プログラム詳細

Photo:堀田力丸
■日時・会場
2012.4.4 [水] 19:00開演(18:30開場)
※ この公演は終了いたしました。
東京文化会館 小ホール

■出演
タンゴアンサンブル「アストロリコ」
  バンドネオン:門奈紀生、星野俊路、田中香織、生島大輔
  ヴァイオリン:麻場利華、外薗美穂、麻場友姫胡
  ヴィオラ:木村直子
  チェロ:木村政雄
  コントラバス:大塚 功
  ピアノ:平花舞依

■曲目
ゴビ:オルランド・ゴニに捧ぐ
マルティネス:パブロ
ダゴスティーノ:カフェ・ドミンゲス
M.カナロ/J.カナロ:芸術家の心
チャルロ:素敵な格好
アローラス:スイパーチャ
早川真平:パレルモの夜
カステジャーノス:メタ・フィエロ
デマルコ:エントラドール
バルカルセ:おまえが魔術師なら
ピアソラ:来るべきもの
プグリエーセ:ラ・ジュンバ
ピアソラ:リベルタンゴ
パウロス:敬愛なる市民
サンティーニ:ガウチョの伝説
プラサ:吟遊詩人
門奈紀生:二人日和
プグリエーセ:想い出
フィルポ:夜明け
ルジェーロ:二人のために
デマルコ:パタ・アンチャ
ピアソラ:スム
※当初発表の曲目より変更になりました。
[アンコール]
ラ・クンパルシータ

出演者

タンゴアンサンブル「アストロリコ」 日本を代表するバンドネオンの名演奏家、門奈紀生を中心に1992年4月、京都でデビュー。初海外公演(1993年)からすでに「驚異的な偉業を成し遂げた日本人グループ」と絶賛され、第2回世界タンゴサミットに初の日本人アーティストとして招聘を受ける。本場のタンゴ通やメディアから「タンゴの何たるかを我々に示してくれた偉大なるアーティスト」と賞賛される。以後、本場の辛口タンゴファンからも「日本の名門楽団」として大きな支持を受ける等、人気楽団に成長し、ブエノスアイレスのソロタンゴ放送でアストロリコの演奏が毎日放映されており、日本国内よりも本場アルゼンチンでの知名度の方が高いほどになっている。その他、レクチャー・コンサートやプロ演奏家対象にワークショップを開催する等、次世代へタンゴを繋げるための「タンゴ草の根運動」も熱心に展開し、若手タンゴ・ミュージシャン輩出に大きく貢献。その活動ぶりに「タンゴ新世紀の旗手」とも称されてきた。リーダー門奈紀生の指導のもと、小編成から大編成に至るまでレギュラーメンバーで構成される稀少な楽団。ここ数年は、1950年代前後の作品をオルケスタ・ティピカ編成で復興させ、ピアソラの音楽でタンゴを知った新世代にも、さらなるタンゴの魅力を伝える活動として注目されている。

公式サイト http://www.astrorico.com/

バンドネオン:門奈紀生 Bandoneon:Toshio Monna 日本の名だたる楽団で活躍後、1991年に自己の楽団アストロリコを結成。日本人離れしたタンゴの感性に、本場アルゼンチンでもマスコミや聴衆から「奇跡!」と驚嘆される。次世代にタンゴを伝えるべく、常に一歩先を見据えた活動によって現在の若い優秀なタンゴ演奏家の出現に多大なる貢献をし、彼らの優れた活動にも大きく影響を及ぼす。「黄金の左腕を持つバンドネオン奏者」の異名のとおり、琴線にふれる情感豊かな演奏で人々を魅了している。また、その高い音楽性と温厚な人柄によりタンゴ界以外の芸術分野からも要請を受け、クラシックのオーケストラともソリストとして共演し、絶賛を浴びる。最近では藤村志保・栗塚旭主演の映画『二人日和』(2005年度ドイツ・フランクフルトでの映画祭でジャパン・コネクション・グランプリ受賞)の音楽も手がけ、話題を呼んだ。

バンドネオン:門奈紀生 Bandoneon:Toshio Monna

バンドネオン:星野俊路 Bandoneon:Shunji Hoshino 1981年生まれ。19歳の時、岡本昭氏に入門。その後、「岡崎恵二とシンパティコ」等で演奏活動を経験し、2005年に門奈紀生に師事するため埼玉県から京都に転居。2006年からアストロリコ六重奏の第二バンドネオンとして参加。最近ではギターとのコンビで「グレリオ」、またアストロリコ関係の若手で構成されるユニット「コケータ」等でも活動している。

バンドネオン:星野俊路 Bandoneon:Shunji Hoshino

バンドネオン:田中香織 Bandoneon:Kaori Tanaka 2006年からバンドネオンを始め、アストロリコの下城聖史、門奈紀生両氏に師事。2007年秋からアストロリコ・レディース「タンゴ・アルコイリス」のバンドネオン奏者として活動を開始。アストロリコの若手バンドネオンで結成された「タンゴ・エン・ビア」にも参加。2008年からオルケスタ・アストロリコにも参加。貴重な女性バンドネオン奏者として期待されている。

バンドネオン:田中香織 Bandoneon:Kaori Tanaka

バンドネオン:生島大輔 Bandoneon:Daisuke Ikushima 門奈紀生に師事。若手の中でも古参メンバーの一人。オルケスタ・アストロリコ10周年記念アルバムのレコーディングにも参加。バンドネオンを始める以前からの活動に一時専念しながらも、ジャズとのセッション等でバンドネオンの活動を続け、2011年よりオルケスタ・アストロリコに復帰。アストロリコの若手バンドネオンで結成された「タンゴ・エン・ビア」にも参加。

バンドネオン:生島大輔 Bandoneon:Daisuke Ikushima

ヴァイオリン:麻場利華 Violin:Rica Asaba 大阪音楽大学卒。タンゴ世界サミット(グラナダ/1995)で演奏を聴いたアントニオ・アグリが自ら舞台裏に駆けつけ「キミはアルゼンチン人か?」と賛辞を送り、親交があったウーゴ・バラリスは「彼女に教えることは無い」と称賛。2000年のタンゴ世界サミットでは、現代タンゴの巨匠ロドルフォ・メデーロス率いる「タンゴ世界オーケストラ」に同氏から強い要請を受けて参加。また、タンゴ番組(FMラジオ)のDJを4年間務めた。2007年秋にアストロリコ・レディース「タンゴ・アルコイリス」を立ち上げ、女性だけの「男前タンゴ」で好評を得ている。

ヴァイオリン:麻場利華 Violin:Rica Asaba

ヴァイオリン:外薗美穂 Violin:Miho Hokazono 京都市立芸術大学卒。1996年グリーンユースオーケストラのコンサートミストレスを務めた他、クラシック界で活躍する傍らアイリッシュ・フィドラーとしても自身のユニット「Spool」を結成し活躍している。2008年ブエノスアイレスにてヴァイオリニストのミゲル・ベルテッロ氏よりタンゴの薫陶を受けて研鑽を積み、現地のライブ出演でも好評を得る。アストロリコ六重奏やアストロリコ・レディース「タンゴ・アルコイリス」「コケータ」でも積極的に活動中。

ヴァイオリン:外薗美穂 Violin:Miho Hokazono

ヴァイオリン:麻場友姫胡 Violin:Yuiko Asaba ロンドン大学民族音楽学部、同大学院を卒業。2005年にブエノスアイレスに渡ってフェルナンド・スアレス・パスに師事し、ディプロマを受ける。オルケスタ・エスクエラ・デ・タンゴで研鑽を積んだ後、アルゼンチンタンゴ界でプロ活動を展開し、高い評価を得る。その一方で、民族音楽学の世界学会で講演をする等、多方面で活躍中。スアレス・パス氏より絶賛された《タンゴの歴史》を2011年6月ブエノスアイレスでレコーディング。アルバム『タンゴの歴史……とわたし』をリリース。

ヴァイオリン:麻場友姫胡 Violin:Yuiko Asaba

ヴィオラ:木村直子 Viola:Naoko Kimura 京都市立芸術大学卒。西日本テレビ賞受賞。ウィーン市立音楽院留学。京都フィルハーモニー室内合奏団のコンサートミストレスを1995年まで務める。現在夫君と音楽集団「音登夢」を主宰し活躍中。タンゴユニット「コケータ」では初代主席ヴァイオリニストとして活動。オルケスタ・アストロリコや「タンゴ・アルコイリス」では、2007年夏からヴィオラを担当し、持ち前の気風の良さで中低音を強力にバックアップしている。

ヴィオラ:木村直子 Viola:Naoko Kimura

チェロ:木村政雄 Cello:Masao Kimura 京都市立芸術大学卒。ウィーン市立音楽院留学。1997年まで京都フィルハーモニー室内合奏団に在籍。現在、音楽集団「音登夢」(俳優の常田富士男氏が命名)を主宰。オリジナルCDは主に木村自身の編曲。特に直子夫人との二重奏は、ヴァイオリンとチェロの二重奏とは思えないほどオーケストラに匹敵するサウンドを醸し出し、固定ファンが多い。中でもタンゴ作品は「タンゴ・チェロのお手本」と高い評価を得ている。

チェロ:木村政雄 Cello:Masao Kimura

コントラバス:大塚 功 Contrabass:Isao Otsuka 大阪音楽大学卒。コントラバス奏者としてトップクラスのテクニックを修得し、併せて豊かな感性とリズム感でタンゴ、ジャズ、クラシック等、様々なジャンルを弾きこなす逸材。「伝統的かつ現代的に洗練されたプレイセンスには抜きん出たものがある!」と国内外より高い評価を得ている。

コントラバス:大塚 功 Contrabass:Isao Otsuka

ピアノ:平花舞依 Piano:Mai Hirahana 大阪音楽大学卒。ソロリサイタルを開催する一方で、器楽・声楽コンクール等の信頼される伴奏者として活躍中に、アストロリコと出会う。的確なテクニックとリズム感を持ち、華奢な姿に反してダイナミックな演奏でアストロリコや「タンゴ・アルコイリス」の土台を支えている。近年はミュージカルのステージや、レギュラーのピアノソロ・ライブでも活躍中。

ピアノ:平花舞依 Piano:Mai Hirahana

■曲目解説

解説・飯塚久夫(日本タンゴ・アカデミー副会長)
ゴビ:オルランド・ゴニに捧ぐ
ゴニは31歳で夭折した天才的ピアニスト。1937年、アニバル・トロイロ楽団発足時に参加したことで有名。ゴニが残した未完のテーマを基に親友アルフレッド・ゴビが作曲した。

マルティネス:パブロ
作者ホセ・マルティネスは1920年代末まで活躍したタンゴ初期のピアニスト。この曲は1920年頃の作品であるが、トロイロが1940年代に採り上げて甦った。

ダゴスティーノ:カフェ・ドミンゲス
アンヘル・ダゴスティーノ楽団(フリアン・センテージャの語り)の名演で有名な曲。かつて一世を風靡したタンゴ・アーティストたちが毎夜集まったカフェを詠う。

M.カナロ/J.カナロ:芸術家の心
フランシスコを長兄とするカナロ5人兄弟の3番目がフアン、末弟がマリオ。二人で六重奏団を共同主宰したこともある。フアンは本場からの初来日アーティスト(1954年)。

チャルロ:素敵な格好
チャルロは1928~32年までフランシスコ・カナロ楽団の専属歌手として活躍した。作曲家としても有能。この曲の意味「凄い格好」とは「魅力的な美女」とも「強面の伊達男」ともとれる。

アローラス:スイパーチャ
1924年32歳でパリに客死し「バンドネオンの虎」と称されるエドゥアルド・アローラスの作品。題名はブエノスアイレスにある通りの名前。日本ではエクトル・バレ-ラ楽団の名演で有名。

早川真平:パレルモの夜
日本タンゴ界の頂点は早川真平と藤沢嵐子。かつて毎年日比谷公会堂で行われたタンゴ祭でも、毎日流れるラジオでも、彼の指揮する「オルケスタ・ティピカ東京」は聴衆を魅了した。

カステジャーノス:メタ・フィエロ
「早川真平とオルケスタ・ティピカ東京」のテーマ・ソングがこの曲。やはりミロンガで有名な「ラ・プニャラーダ」と同じ作者。題名は「ガンガン飛ばせ」という俗語。

デマルコ:エントラドール
1952年に作者の属するオスバルド・プグリエーセ楽団が初録音。題名は「押しの強い自己主張をする人」あるいは「人の心に入り込んで忘れられない印象的なもの」を意味する。

バルカルセ:おまえが魔術師なら
エミリオ・バルカルセはプグリエーセ楽団のバイオリン奏者を1949~68年まで務め、晩年は若者の育成にも精力を注いだ。この曲のように器楽曲作品に優れる。

ピアソラ:来るべきもの
アストル・ピアソラが1954年に発表した。当時のタンゴ概念を超えた大作。下降半音階の前奏、新しいシンコペーションのリズム等、文字通りタンゴに新たな道を開いた作品。

プグリエーセ:ラ・ジュンバ
プグリエーセが創作したこの「ジュンバ」というリズムのとり方(ピアノの左手が重要)は、元来、決して単純ではなかったタンゴのリズムに更に大きな魅力を付加した。

ピアソラ:リベルタンゴ
没後5年頃からピアソラ・ブームが始まるが、その日本でのきっかけはこの曲。実際はスランプに陥ったピアソラがイタリアに渡り、束縛からの解放を想い1974年に作った曲。

パウロス:敬愛なる市民
1910年代の古い曲。作者は名曲「インスピラシオン」を作ったバイオリン奏者。低音のメロディによる導入やバンドネオンのソロ・パート等、当時としては優れている。

サンティーニ:ガウチョの伝説
1940年代から始まるタンゴ第二黄金時代をリードしたミゲル・カロの流れからスイング感溢れるタンゴが1950年代まで多く生み出されるが、この曲はその典型。

プラサ:吟遊詩人
フリアン・プラサはピアノ、バンドネオン奏者。題名は「吟遊詩人」即ち「大草原の即興歌手」を詠ったミロンガ。プラサの曲想も民族音楽風。

門奈紀生:二人日和
「アストロリコ」を率いる門奈の作品。題名通りの映画のテーマ曲。京都の町屋を舞台に不治の病に冒された妻とその夫との愛の形を叙情豊かに描いた名作。映画の情感を見事に表している。

プグリエーセ:想い出
プグリエーセの最高傑作であり、若き日に憧れた年上のバンドネオン奏者パキータ・ベルナルドに捧げたと言われる曲。上記映画でも使われ、タンゴが日本の情景に不思議に調和していた。

フィルポ:夜明け
ロベルト・フィルポ、1910年代の作品。タンゴにも多くの描写曲があるが、これはその典型。朝まで飲んで家路につく人達と、早起きして仕事に出てくる人達との対照が描かれている。

ルジェーロ:二人のために
オスバルド・ルジェーロはプグリエーセ楽団で第一バンドネオンを1968年まで務めた。1952年の作品。低音部、高音部を全て使うバンドネオン変奏が聴き所。

デマルコ:パタ・アンチャ
マリオ・デマルコ在籍中のプグリエーセ楽団が1957年に録音したこの曲はプグリエーセ最高名演の一つ。題名は「エントラドール」と同じく「押しの強い人」のこと。

ピアソラ:スム
ピアソラはこの曲を1972年のコンフント・ヌエベ(九重奏団)で録音した。題名はピアソラが出演していた店の名前にちなんだもの。


主催:東京・春・音楽祭実行委員会 後援:アルゼンチン共和国大使館 協力:株式会社ラティーナ

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