PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2012-

東京春祭 歌曲シリーズvol.8ミヒャエラ・ゼリンガー & 小菅 優 ~ウィーンを歌う

プログラム詳細

Photo:青柳 聡
■日時・会場
2012.3.31 [土] 15:00開演(14:30開場)※ この公演は終了いたしました。
東京文化会館 小ホール

■出演
メゾ・ソプラノ:ミヒャエラ・ゼリンガー
ピアノ:小菅 優

■曲目
シューベルト:ゲーテの詩による歌曲
 ミニョン「君よ知るや南の国」 D.321 speaker.gif[試聴]
 ガニュメート D.544 speaker.gif[試聴]
 湖上で D.543 speaker.gif[試聴]
 糸を紡ぐグレートヒェン D118 speaker.gif[試聴]
 憩いなき愛 D.138 speaker.gif[試聴]
 ミューズの息子 D.764 speaker.gif[試聴]
 恋する者のさまざまな姿 D.558 speaker.gif[試聴]
 歓迎と別れ D.767 speaker.gif[試聴]
マーラー:《リュッケルトの詩による5つの歌》 speaker.gif[試聴]
 私の歌をのぞき見しないで
 私は快い香りを吸い込んだ
 私はこの世に捨てられて
 真夜中に
 美しさをあなたが愛するなら
信時 潔:歌曲集《沙羅》(詩:清水重道)より
  丹澤、鴉、占ふと、行々子(よしきり)
R.シュトルツ:
 歌は終わった(映画音楽)
 喜歌劇《二人の心はワルツを奏で》より
  「あなただって、いつかはわたしを裏切るわ」
 ウィーンの春
 喜歌劇《人気者》より「君はわが心の皇帝」
※当初発表の曲目より変更になりました。
[アンコール]
レハール:オペレッタ《ジプシーの恋》より「ツィンバロンの響きを再び聞けば」
シューベルト:ます
R.シュトルツ:プラーターに再び花は咲き

~東京春祭 歌曲シリーズ~

【試聴について】
speaker.gif[試聴]をクリックすると外部のウェブサイト「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」へ移動し、
プログラム楽曲の冒頭部分を試聴いただけます。
ただし試聴音源の演奏は、「東京・春・音楽祭」の出演者および一部楽曲で編成が異なります。


出演者

メゾ・ソプラノ:ミヒャエラ・ゼリンガー Mezzo Soprano:Michaela Selinger オーストリアのオーバーエスターライヒ州生まれ。リンツの音楽学校を卒業。ウィーンとバーゼルで声楽を学び、2005年にイオアン・ホレンダー氏によってウィーン国立歌劇場に招かれる。
ウィーン国立歌劇場の専属歌手として、モーツァルト《フィガロの結婚》のケルビーノや《イドメネオ》のイダマンテ、ロッシーニ《セビーリャの理髪師》のロジーナ、R.シュトラウス《ばらの騎士》のオクタヴィアン等、得意分野での数多くの重要な役を歌ってきた。
2008年にはJ.シュトラウスⅡ《こうもり》でオルロフスキー公爵を歌ってチューリッヒ歌劇場にデビューした。ドイツのエッセンにあるアールト劇場へのデビューは2009年、ステファン・ゾルテスが指揮するエッセン・フィルハーモニーと共演し、オクタヴィアンを歌った。オクタヴィアン役でのゼリンガーの演技について、ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング紙は「公演のハイライトはミヒャエラ・ゼリンガーである。彼女は若い恋人としての情熱的な部分とマリアンデルとしての伝統的な喜劇の要素の両方を兼ね備え、……メロディアスで、豊かで、自由によどみなく流れるメゾ・ソプラノの声を持っている」と評している。
2009年5月に行われたウィーン国立歌劇場創立140周年記念公演での《ドン・ジョヴァンニ》ではツェルリーナを歌い、観客とプレス関係者の双方を喜ばせ、「素晴らしい」「最高だ」という絶賛の声を浴びた。さらに同劇場では、同じシーズンに、アリベルト・ライマン《メデア》の世界初演でクレウサを歌い、絶賛を博している。
リヨン歌劇場ではフンパーディンク《ヘンゼルとグレーテル》のヘンゼルを、そして東京の新国立劇場ではモーツァルト《フィガロの結婚》のケルビーノを歌っている。
その他、エッセンのアールト劇場ではヘンデル《ヘラクレス》のデジャニーラ役で大成功を収めた。
2010/11シーズンのオペラ公演には、主なものとして、エッセンでのベッリーニ《カプレーティ家とモンテッキ家》のロメオ、ウィーン国立歌劇場とストラスブールの新演出によるR.シュトラウス《ばらの騎士》のオクタヴィアン、グラインドボーン音楽祭でのワーグナー《ニュルンベルクのマイスタージンガー》の新演出によるマグダレーネ等がある。
2009年のザルツブルク音楽祭ではアイヴァー・ボルトン指揮によるハイドン《スターバト・マーテル》でアルト・パートを歌った。またエッセン・フィルハーモニーと共演したマーラー《交響曲第4番》ではソプラノ・ソロを、ステファン・ゾルテスとはマーラー《リュッケルト歌曲集》を歌った。2010年4月、ウラディーミル・フェドセーエフが指揮するモスクワ放送交響楽団との共演によるマーラー《大地の歌》でアルト・パートを歌い、モスクワ音楽院大ホールへのデビューを果たした。
今後予定されているコンサート・プロジェクトにはウィーン楽友協会でのバッハ《クリスマス・オラトリオ》とモーツァルト《大ミサ曲ハ短調》がある。 オペラとコンサートの両方でリッカルド・ムーティ、ステファン・ゾルテス、クリスティアン・ティーレマン、フランツ・ウェルザー=メスト、キリル・ペトレンコ等の指揮者と共演している。
歌曲の朗唱もまた、大切にしており、先頃、バリトン歌手のヴォルフガング・ホルツマイアーと組んでヴォルフ《イタリアとスペインの歌曲集》のレコーディングをしたところである。
日本での今後の活動予定は、2012年東京において、ピアニスト小菅優とのリサイタルでの東京・春・音楽祭へのデビューが予定されている。同音楽祭には、翌2013年にワーグナー《ニュルンベルクのマイスタージンガー》で再び出演することになっている。

メゾ・ソプラノ:ミヒャエラ・ゼリンガー Mezzo Soprano:Michaela Selinger

ピアノ:小菅 優 Piano:Yu Kosuge 高度なテクニックと美しい音色、若々しい感性と深い楽曲理解により、現在ヨーロッパで最も注目を浴びている若手ピアニストの一人である。「ダイナミックな音楽表現」(『ハノーファー・アルゲマイネ・ツァイトゥング』紙)や「天使の翼の先端が頬に触れた瞬間を感じさせるピアニシモ」(『フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング』紙)等、特にヨーロッパの聴衆から熱狂的な支持を得ている。2000年ドイツ最大の音楽批評誌『フォノ・フォルム』よりショパンの練習曲全曲録音に5つ星が与えられた他、2002年に第13回新日鉄音楽賞、2004年にアメリカ・ワシントン賞、2006年に第8回ホテルオークラ音楽賞、2007年に第17回出光音楽賞を受賞。
1983年、東京生まれ。東京音楽大学付属音楽教室を経て、1993年よりヨーロッパ在住。9歳よりリサイタルを開き、オーケストラと共演。ヨーロッパで研鑚を積みながら次々と演奏活動を重ね、その足跡はベルリン、ハンブルク、ミュンヘン、ウィーン、ザルツブルク、パリ、アムステルダム、ブリュッセル、チューリッヒ、モスクワ、アメリカ等、年に40ヵ所以上に及ぶ。
これまでに、国内主要オーケストラを始め、ベルリン交響楽団、フランクフルト放送交響楽団、ハンブルク・北ドイツ放送交響楽団、ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団、コンスタンツ・南西ドイツ・フィルハーモニー、サンクトペテルブルク交響楽団、フランス国立放送交響楽団、ポーランド国立放送カトヴィツェ交響楽団、シンガポール交響楽団等と共演。指揮者では小澤征爾、大植英次、シャルル・デュトワ、ルドルフ・バルシャイ、デニス・ラッセル・デイヴィス、ゲルト・アルブレヒト、アレクサンドル・ドミトリエフ、オスモ・ヴァンスカ、ローレンス・フォスター、エリアフ・インバル、ヤツェク・カスプシク、クリスティアン・アルミンク等と共演している。
2005年にはサカリ・オラモ指揮フィンランド放送交響楽団との全国ツアーを行った他、11月にニューヨークのカーネギー・ホールでデビューリサイタルを行い、高い評価を得た。2006年には、ザルツブルク音楽祭で日本人ピアニストとして2人目となるリサイタルデビューを果たし、西村朗が小菅優のために書いた《カラヴィンカ》を世界初演したことでも話題を呼んだ。また2008年にはサー・ロジャー・ノリントン指揮シュトゥットガルト放送交響楽団の日本ツアーにソリストとして出演した。同年NHK交響楽団定期公演ではタン・ドゥンのピアノ協奏曲《ファイア》を作曲家自身の指揮で日本初演した。2009年には水戸室内管弦楽団定期演奏会で小澤征爾と再び共演、大植英次指揮ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団との日本ツアーも行った。2010年には大植英次指揮の同楽団定期演奏会に再度招かれ、モーツァルト《ピアノ協奏曲第27番》を披露。また2010年ザルツブルク音楽祭で、イーヴォ・ポゴレリッチの代役としてフィリップ・ヘレヴェッヘ指揮カメラータ・ザルツブルクとショパン《ピアノ協奏曲第2番》を演奏し、絶賛を博した。
2010/11シーズンは、樫本大進、川本嘉子、趙静とのピアノ・カルテットで室内楽演奏会、サイトウ・キネン・フェスティバル松本、姫路国際音楽祭、ユベール・スダーン指揮大阪交響楽団、ワシーリ・ペトレンコ指揮NHK交響楽団、カルロス・ミゲル・プリエト指揮スペイン・ビルバオ交響楽団等との共演等が予定されている。室内楽にも積極的に取り組んでおり、ジャック・ズーン、カール・ライスター、ポール・メイエ、豊嶋泰嗣、樫本大進、庄司紗矢香、佐藤俊介、イェウン・チェ、アントワン・タメスティ、堤剛らと共演。リサイタルにおいても、紀尾井ホール(東京)、いずみホール(大阪)でベートーヴェン《ピアノ・ソナタ》全曲演奏会(全8回)といった意欲的なシリーズをスタートする等、着実に活躍の場を広げている。
ザルツブルク音楽祭を始め、ラインガウ音楽祭、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭、シュヴェツィンゲン・モーツァルト音楽祭、メクレンブルク=フォアポンメルン音楽祭、フランスのラ・ロック・ダンテロン国際ピアノフェスティバル、ラ・フォル・ジュルネ、サイトウ・キネン・フェスティバル松本等、多くの国際音楽祭から招かれ各地で活躍している。

公式サイト http://www.yu-kosuge.com/

©Steffen Jänicke

ピアノ:小菅 優 Piano:Yu Kosuge

■曲目解説

シューベルト:ゲーテの詩による歌曲
シューベルトは31年の生涯に650を超える歌曲を書き、テクストに用いた詩人は115人にのぼる。なかでも特に敬愛した詩人がゲーテであったが、ゲーテのシューベルトに対する態度は冷淡で、献呈のために送られてきた歌曲集の浄書譜をろくに見ることもなく返送したと言われている。
今回演奏される曲は、ゲーテの教養小説『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』の一節を材に用いた「君よ知るや南の国」、ギリシャ神話に登場する美少年ガニュメデスが抱く美しい自然と父なる神への畏敬の念を歌った「ガニュメート」、かつての恋人リリー・シェーネマンへの思いを断つ際のゲーテの詩に付曲した「湖上で」、大作『ファウスト』にもとづいた名曲「糸を紡ぐグレートヒェン」、激しい愛を歌い上げた「憩いなき愛」、明るく楽しげな雰囲気の「ミューズの息子」、自身をさまざまなものに喩えてありのままの自分を受け入れてほしいと恋人に願う「恋する者のさまざまな姿」、恋人との夜の逢瀬と朝の別れを情感豊かに歌った「歓迎と別れ」の8曲である。

マーラー:《リュッケルトの詩による5つの歌》
交響曲のみならず、歌曲でも異彩を放つ作品を残したグスタフ・マーラー。本作は、《亡き子をしのぶ歌》(同じリュッケルトの詩をテクストとしている)と同時期に作曲されたが、《亡き子をしのぶ歌》とは異なり、5つの歌に内容的な関連性はない。
5曲は順に、恋人に書いている歌を途中でのぞき見しないでと歌う「私の歌をのぞき見しないで」、恋人からもらった花の芳しさを歌う「私は快い香りを吸い込んだ」、現世を離れた場所に身を置いた「私はこの世に捨てられて」、真夜中への不安と神に全てを委ねることを高らかに歌う「真夜中に」、容姿ではなく愛ゆえに私を愛してほしいと歌う「美しさをあなたが愛するなら」である。

信時 潔:歌曲集《沙羅》より「丹澤」「鴉」「占ふと」「行々子」
信時潔は、1936年、東京音楽学校の同僚であった国文学者の清水重道の詩を用いて、歌曲集《沙羅》を作曲した。この作品は全8曲からなるが、今回は、丹沢山地へ登山した者が目にした風景と心境を描いた「丹澤」、ひょうきんな雰囲気を持った「鴉」、揺れる恋心を表現した「占ふと」、故郷で聴いたヨシキリの鳴き声に以前と変わらぬ風景を思った「行々子」の4曲が披露される。

R.シュトルツ:
 歌は終わった
 オペレッタ《二人の心はワルツを奏で》より「あなただって、いつかはわたしを裏切るわ」
 ウィーンの春
 オペレッタ《人気者》より「君はわが心の皇帝」

ロベルト・シュトルツと言えば、指揮者としての知名度が高いが、作曲に関してもフンパーディンクに師事し、ウィンナ・オペレッタ終末期の作曲家として多くの秀作を残している。
「歌は終わった」は、1930年にゲザ・ヴォン・ボルバリ監督の映画で使用された作品で、テクストは映画の脚本を書いたワルター・ライシュによる。オペレッタ《二人の心はワルツを奏で》は1930年にヒットした映画を舞台化したもので、1933年にチューリヒで初演された。「あなただって、いつかはわたしを裏切るわ」は、オペレッタのアリアというよりは、ジャズやポピュラー音楽の雰囲気を彷彿とさせる。それに対し「ウィーンの春」は、まさにウィーン気質といえる華やかな情緒が聴く者を魅了する。オペレッタ《人気者》は彼の初期を代表する作品で、1916年にベルリンで初演された。「君はわが心の皇帝」は、そのなかのアリアで、優しげなメロディにはレハールなど先人たちの影響が感じられる。



主催:東京・春・音楽祭実行委員会 後援:オーストリア大使館

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