PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2011-

シューベルト ピアノ三重奏 ~夭折の作曲家、晩年の傑作

ソリストたちによる激しい個性のぶつかり合いと調和を堪能できるのがピアノ・トリオの醍醐味。シューベルトの傑作2曲を、春の夕暮れにお届けします。

プログラム詳細

2011:04:02:16:00:00

Photo: Satoshi Aoyagi
■日時・会場
2011.4.2 [土] 16:00(15:30開場)
旧東京音楽学校奏楽堂

■出演
ヴァイオリン:川田知子
チェロ:奥泉貴圭
ピアノ:加藤洋之

■曲目
シューベルト:
 ピアノ三重奏曲 第1番 変ロ長調 op.99/D.898speaker.gif[試聴]
 ピアノ三重奏曲 第2番 変ホ長調 op.100/D.929speaker.gif[試聴]
曲目解説はこちら

[アンコール]
モーツァルト:ピアノ三重奏 第6番より第2楽章アンダンテ・スピアナート

【試聴について】
speaker.gif[試聴]をクリックすると外部のウェブサイト「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」へ移動し、
プログラム楽曲の冒頭部分を試聴いただけます。
ただし試聴音源の演奏は、「東京・春・音楽祭」の出演者および一部楽曲で編成が異なります。


出演者

ヴァイオリン:川田知子 Violin: Tomoko Kawada 東京生まれ。4歳よりヴァイオリンを始め、東京藝術大学附属高等学校を経て、東京藝術大学に入学。在学中の1989年に奨学金を得て、アスペン音楽祭に参加。同年、第36回パガニーニ国際コンクール入賞。1990年、アラスカ・アンカレッジ音楽祭に東京チェンバー・ソロイスツのメンバーとして招かれる一方、イタリアはシエナのキジアーナ音楽院室内楽サマー・コースに参加。ディプロマ名誉賞受賞。 1991年、東京藝術大学を首席で卒業。同年、第5回シュポア国際コンクールで優勝。1992年1月、NHK交響楽団と共演。バルセロナ市立管弦楽団、サンクトペテルブルク交響楽団、モスクワ・フィルハーモニー交響楽団等の日本公演にソリストとして起用され好評を博し、1999年4月にはサンクトペテルブルグ交響楽団の定期演奏会に招待され、大成功を収めた。
2002年、デビュー10周年を迎え、札幌及びトッパンホール(東京)で演奏会を行なう。緩みない集中力でイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全6曲を見事に弾き切り、大絶賛を浴びる。2003年4月、永野英樹のピアノでCD『オペラ座のヴァイオリン弾き』がトライエムから発売。9~10月、平成15年度国際交流基金日本文化紹介派遣事業でトルコ及びエジプトでリサイタルを行なう。2003年度第33回エクソンモービル音楽賞・洋楽部門奨励賞を受賞。
毎年、宮崎国際音楽祭に招かれており、2006年5月は武満徹の室内楽演奏会にも出演。チェンバロの中野振一郎とのデュオも好評を博している。2007年、ブダペストでピアノのイェヌー・ヤンドゥーとデュオ演奏会を行ない、大成功を収めた。
マイスター・ミュージックより『小林道夫の芸術III~モーツァルトのピアノとヴァイオリンのためのソナタ』『ヴィターリ:シャコンヌ』(ヴァイオリン作品集)、そして、中野振一郎とのデュオのCDが3枚発売されている。
音楽的にもますます円熟味を増し、幅広い分野での活躍が注目されている。これまでに、小林武史、澤和樹、田中千香士、原田幸一郎、堀正文、ヴォルフガング・マーシュナーの各氏に師事。

川田知子サイト http://www.tomoko-kawada.com/

© 大野純一

ヴァイオリン:川田知子 Violin: Tomoko Kawada

チェロ:奥泉貴圭 Cello: Takayoshi Okuizumi 1983年札幌出身。6歳よりチェロを始め、東京藝術大学附属高校卒業後、ドイツ・トロッシンゲン音楽大学を経て、2007年からバイエルン国立歌劇場の契約団員となり2年間研鑽を積む。2006年度文化庁在外研修員。2009年に帰国し、現在はフリーの演奏家として活動中。これまでに、上原与四郎、河野文昭、原田禎夫、イフ・サバリーの各氏に師事。

チェロ:奥泉貴圭 Cello: Takayoshi Okuizumi

ピアノ:加藤洋之 Piano: Hiroshi Kato 東京藝術大学附属音楽高等学校を経て同大学器楽科を卒業。在学中に安宅賞を受賞し、日本音楽コンクールに入選。1990年よりハンガリー国立リスト音楽院に留学し、イシュトヴァン・ラントシュに師事。同年、ジュネーヴ国際音楽コンクールで第3位に入賞し、本格的な演奏活動を開始する。1993年のルセ国際音楽祭に招待され、ブルガリア国立放送交響楽団と共演した後、ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団やヘルシンボリ交響楽団の定期公演に出演。ハンガリー国立交響楽団等、内外のオーケストラと共演を重ね、東欧各地でリサイタルや放送への出演等の演奏活動を行なった。1996年、ドイツのケルンに移り、パヴェル・ギリロフに師事するかたわら、室内楽の演奏にも力を入れ、ドイツ各地や、イタリア、スイス、オーストリア、スペイン等で演奏会や放送への出演、録音等を行ない、2001年にはリムーザン国際室内楽フェスティバル(フランス)に招かれる。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーとしばしば室内楽を共演し、特に第一コンサートマスターのライナー・キュッヒルとは2001年以来、デュオ・パートナーとして数多くの演奏を重ね、2002年12月、ロンドンのウィグモア・ホールへのデビューは「THE TIMES」紙上で絶賛された。2010年6月、ウィーン・ムジークフェラインザールで3日にわたり、ベートーヴェンのピアノとヴァイオリンのためのソナタ全曲演奏会が楽友協会主催によって行なわれた。

ピアノ:加藤洋之 Piano: Hiroshi Kato

■曲目解説

シューベルト:
 ピアノ三重奏曲 第1番 変ロ長調 op.99/D.898
 ピアノ三重奏曲 第2番 変ホ長調 op.100/D.929

 編成の大小にかかわらず、シューベルトの最晩年の重要作品には演奏時間が長大化する傾向が見られる。例を挙げると、没年にあたる1828年に書かれた3曲のピアノ・ソナタ(D958、959、960)は全て30分を超え、また、シューマンに「天国的な長さ」と評された交響曲《ザ・グレート》も約60分(注:楽譜の指定通り繰り返しを行なった場合)となっている。1827年の作曲とされる2つのピアノ三重奏曲もまた、第1番が約40分、第2番が約50分という大きさである。
 《ピアノ三重奏曲 第1番》は1836年にディアベリ商会(ベートーヴェンの《ディアベリ変奏曲》でおなじみのアントニオ・ディアベリが運営していた出版社)が出版した作品であるが、成立事情には不明な点が多い。第1楽章はソナタ形式で、手堅い構成の快活な楽章。第2楽章は複合三部形式で、チェロによって始められるロマンティックな旋律が重要なモティーフとなっている。第3楽章はスケルツォだが、舞曲的な要素が感じられ興味深い。第4楽章はベートーヴェンも好んで用いたロンド・ソナタ形式で、シューベルトならではの展開が大きなスケール感を付与している。
 1827年11月に作曲され、翌年3月に行なわれた自作演奏会でも好評だった《ピアノ三重奏曲 第2番》は、ライプツィヒの出版商プロープストにより世に出され、シューベルトにとっては最初の国外出版作品となった。主題のユニゾンによって開始される第1楽章は、古典的なソナタ形式のスタイルを採りながらも、和声の取り扱いや展開の複雑さに個性が感じられる。第2楽章は3つの旋律を中心に展開する緩除楽章。第3楽章はスケルツォで、ピアノと弦楽器のカノン的な掛け合いが印象的。第4楽章はロンド・ソナタ形式に近いが、4つの旋律を用いてより自由な感覚で展開される。



主催:東京・春・音楽祭実行委員会 後援:財団法人台東区芸術文化財団

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