東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2011-
ニーノ・ロータへのオマージュ ~イタリア映画音楽の巨匠に捧ぐ
フェリーニの名作の数々や「ゴッド・ファーザー~愛のテーマ」の作曲家として知られ、2011年に生誕100年を迎えるイタリア映画音楽の巨匠ニーノ・ロータの作品を中心に、イタリア名画の音楽をお楽しみ下さい。
プログラム詳細
2011:03:25:19:00:00
2011.3.25 [金] 19:00開演(18:30開場)
東京文化会館 小ホール
■出演
ギター:鈴木大介、松尾俊介
バンドネオン:北村 聡
ウッドベース:吉野弘志
ドラムス・パーカッション:芳垣安洋
■曲目
ヘンリー・マンシーニ:ひまわり

エンニオ・モリコーネ:ニュー・シネマ・パラダイス

ルイス・バカロフ:イル・ポスティーノ

エンニオ・モリコーネ:
夕餉の食卓
シシリアン
ニーノ・ロータ:
ゴッド・ファーザー・メドレー

8 1/2

ロミオとジュリエット

カサノバ
甘い生活

魂のジュリエッタ

アマルコルド

曲目解説はこちら[アンコール]
武満徹:三月のうた
ニーノ・ロータ:カビリアの夜
【試聴について】

プログラム楽曲の冒頭部分を試聴いただけます。
ただし試聴音源の演奏は、「東京・春・音楽祭」の出演者および一部楽曲で編成が異なります。
出演者
ギター:鈴木大介 Guitar: Daisuke Suzuki
作曲家の武満徹から「今までに聴いたことがないようなギタリスト」と評されて以後、新しい世代の音楽家として常に注目され続けている。
マリア・カナルス国際コンクール第3位、アレッサンドリア市国際ギター・コンクール優勝等、数々のコンクールで入賞。
2004年6月~2006年2月まで8回に渡り、20世紀に生まれたギター音楽に毎回異なる視点からアプローチする演奏会「ギター・エラボレーション」を白寿ホールで開催。2005年にはベルリン・パリ・東京において武満徹の舞台《マイ・ウェイ・オブ・ライフ》でケント・ナガノ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団と共演。同年、タイ国際ギター・フェスティバルにも出演し、2006年には同フェスティバルに再び招かれた。2008年2月、ワシントンのケネディセンターで開催されたジャパン・フェスティバルの「A Tribute to Toru Takemitsu」に渡辺香津美、coba、八尋トモヒロと共に出演、大好評を博した。
内外の演奏家からの信頼も厚く、これまでにクロード・ボリング、マーティン・テイラー、渡辺香津美、荘村清志、ブランドン・ロス、古部賢一、須川展也、天羽明惠らと共演を重ねている。また、小澤征爾を中心に行なわれているサイトウ・キネン・フェスティバル松本には、ゲスト・プレイヤー及びオーケストラ・メンバーとして、1997年以降頻繁に招かれている。2007年にはジャズギタリストの鬼怒無月とのユニット「The DUO」を結成。各方面から高い評価を得ている。
現代音楽の初演やアンサンブルとコンチェルト等、膨大なレパートリーにおける明晰な解釈力と洗練された技術は多方面からの評価を確立し、難度の高いプロジェクトにおけるファースト・コール・ギタリストの位置を維持している。
また、斬新なレパートリーと新鮮な解釈によるアルバム制作はいずれも高い評価を受け、『カタロニア讃歌~鳥の歌/禁じられた遊び~』は2005年度芸術祭優秀賞(レコード部門)を受賞。2006年には武満徹の没後10年を記念し、映画音楽集『夢の引用』をリリース。2007、08年にリリースした『キネマ楽園』『キネマ楽園Ⅱ/夜の太陽』は、ギター・ソロによる映画音楽のカバーで大ヒットとなった。2009年、シリーズ3作目となる『キネマ楽園~love stories』をリリース。最新盤は『大聖堂/追憶のショーロ バリオス名曲集Ⅰ』(ベルウッドレコード)。
これまでにNHK-FM「クラシック・リクエスト」(1999~2001年)、「気ままにクラシック」(2002~08年3月)のパーソナリティーを務めた。第10回出光音楽賞受賞。平成17年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。洗足学園音楽大学客員教授。
横浜生まれ。ギターを市村員章、福田進一、尾尻雅弘の各氏に、作曲を川上哲夫と中島良史の両氏に師事。他に、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽院においてエリオット・フィスクとホアキン・クレルチの両氏に師事。
鈴木大介公式ブログ http://daisukesuzuki.at.webry.info/
© KEI TANIGUCHI
ギター:松尾俊介 Guitar: Shunsuke Matsuo
1979年京都市に生まれる。日本ギターコンクール、東京国際ギターコンクール等に受賞歴を持つ。1999年に渡仏。2003年、パリ国立高等音楽院ギター科を審査員満場一致の首席で卒業。2004年には同音楽院室内楽科を卒業、アントニー国際ギターコンクール(仏)で第3位入賞し、帰国。2005年、庄内国際ギターフェスティバルで第1位オスカー・ギリア賞を受賞。古楽と現代音楽に焦点を当てたファーストCD『ヴァリエ1』(「レコード芸術」準特選盤)をリリースし、トッパンホール(東京)でデビューリサイタルを開催する。
以後、2006年HAKUJUギターFESTA、2007年NHK-FM名曲リサイタル、2008年春のベオグラード国際ギターアートフェスティバル(セルビア)、サラエボの冬(ボスニア)等に出演。ソロのみならず室内楽、オーケストラや邦楽との共演、新作の初演等、多彩な演奏活動を展開している。2008年には、没後60年を迎えたメキシコ国民楽派の父マヌエル・マリア・ポンセの作品集としてセカンドCD『ヴァリエ4/Ponce Guitar Works』をリリースし、「レコード芸術」特選盤に選ばれた。
松尾俊介公式サイト http://shunsukematsuo.com
© Hideyuki Igarashi
バンドネオン:北村 聡 Bandoneon: Satoshi Kitamura
関西大学文学部中退。大学在学中にバンドネオンに出会い、小松亮太に師事。アルゼンチンに短期留学し、フリオ・パネ、オラシオ・ロモのレッスンを受ける。またオルケスタ・エスクエラ・デル・タンゴに参加して学び、大型タンゲリーア「エスキーナ・デ・カルロス・ガルデル」や「チェ・タンゴ」に出演した。2001年、ベトナムでピアソラのバンドネオン協奏曲を演奏、2003年にはバンドネオンの最高峰レオポルド・フェデリコの日本ツアーに参加した。2007年、チリのバルパライソで行なわれた世界タンゴサミットに、またミゲル・バルベーロ・セステートのメンバーとしてモントリオールタンゴフェスティバルに出演。2008年、小松亮太の「若き民衆」公演ではピアソラ《プンタ・デル・エステ組曲》のソリストを務めた。これまでに、鈴木理恵子、須川展也、店村眞積、平部やよい、菊地成孔、川井郁子、夏木マリ、あがた森魚、エゴラッピン、ビクトル・ラバジェン・オルケスタ、仙台フィルハーモニー管弦楽団、奈良フィルハーモニー管弦楽団等と共演し、また様々なアーティストのレコーディングにも参加している。現在、クアトロシエントス、小松亮太&オルケスタティピカ、中島ノブユキ・エテパルマ・アンサンブル等で活動中。
ウッドベース:吉野弘志 Wood Bass: Hiroshi Yoshino
1955年、広島市生まれ。東京藝術大学在学中より明田川荘之(piano)トリオ、坂田明(alto-sax、clarinet)トリオ等のメンバーとしてジャズクラブに出演する。以後、加古隆(piano)、富樫雅彦(percussion)、山下洋輔(piano)、塩谷哲(piano)等のグループに参加する。同時に現代音楽の分野でも活発に活動し、高橋悠治、三宅榛名、吉原すみれ等ともしばしば共演、さらには武満徹プロデュースの「MUSIC TODAY」「八ヶ岳高原音楽祭」、そして2006年の武満徹トリビュート・コンサート「SOUL TAKEMITSU」にも出演。現在はソロと、「彼岸の此岸」{メンバーは太田惠資(violin)、吉見征樹(tabla)、鬼怒無月(guitar)}、「吉野弘志nbaba trio」{メンバーは田中信正(piano)、藤井信雄(drums)}を活動の中心に置き、自らの民族楽器として捉えているウッドベースの可能性を追究すべく、張林(揚琴)を始めとする世界各地の音楽家と様々なセッションを試みている。他にも「金子飛鳥アコースティック・ユニット」「一噌幸弘リーヤリ」「廣木光一Cool Glade 5」といったグループのレギュラー・ベーシストを務め、さらには大貫妙子らヴォーカリストや、作家の山田詠美、奥泉光らとのレコーディングや朗読セッション等でも、独自の悠然とした懐の深い演奏を聞くことができる。作品は『泣いたら湖/モンゴロイダーズ』と、ベースソロ・アルバム『on Bass』。
ドラムス・パーカッション:芳垣安洋 Drums / Percussion: Yasuhiro Yoshigaki
関西のジャズエリアでキャリアをスタートさせ、モダン・チョキチョキズ、ベツニ・ナンモ・クレズマー・オーケストラ、渋さ知らズ等に参加後上京。
渋谷毅、山下洋輔、坂田明、板橋文夫、梅津和時、片山広明、巻上公一、ホッピー神山、大島保克、菊地成孔、オオヤユウスケ、高田漣、ヤドランカ、酒井俊、長谷川きよし、カルメン・マキ、おおたか静流、小島真由実、浜田真理子、カヒミ・カリィ、UA、原田郁子、Jhon Zorn、Bill Laswell等、様々なミュージシャンと共演。
現在、ROVO、大友良英ニュー・ジャズ・オーケストラ、南博GO THERE、アルタード・ステイツや、自身のバンドVincent Atmicus、Emergency!、Orquesta Nudge! Nudge!他とのライブ活動に加え、蜷川幸雄、文学座等の演劇や映画の音楽制作も手掛ける。
メールスジャズフェスティバルを始めとする欧米のジャズや現代音楽のフェスティバルへの出演や、来日ミュージシャンとの共演も多く、海外ではインプロヴァイザーとしての評価も高い。レーベル「Glamorous」主宰。
芳垣安洋公式サイト http://y-yoshigaki.com/
ヘンリー・マンシーニ:ひまわり
マンシーニ(1924-94)は、米クリーブランドでイタリア系アメリカ人として生まれた。フルート奏者である父から英才教育を受けたのち、ジュリアード音楽院でカステルヌオーヴォ=テデスコとクルシェネクに作曲を師事。1952年にユニバーサル・ピクチャーズに入社し、『グレン・ミラー物語』や、彼の名を一躍高めた《ムーン・リバー》を挿入歌とした『ティファニーで朝食を』など、大ヒット映画の音楽を数多く担当した。
《ひまわり》(1970)は、マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレンの主演、イタリア・ネオレアリズモの巨匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督による名作。マンシーニの音楽は物憂げなテーマによって、戦争で引き裂かれた男女の悲哀を描いている。
エンニオ・モリコーネ:ニュー・シネマ・パラダイス
モリコーネ(1928-)はニーノ・ロータに続く、現代イタリア映画音楽の巨匠。聖チェチーリア音楽院にてゴッフレード・ペトラッシに作曲を師事したのち、セルジオ・レオーネやパゾリーニといった映画監督とのコラボレーションで多くの映画音楽を手がけた。また、NHK大河ドラマ「武蔵」の音楽を担当しており、日本とは直接的な縁がある。
『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989)は、彼にとって重要なコラボレーターの一人であるジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品。シンプルで美しいメロディを巧みに用いた音楽が、映像に密やかな彩りを与えている。
ルイス・バカロフ:イル・ポスティーノ
バカロフ(1933-)はアルゼンチン生まれの作曲家で、マカロニ・ウエスタン作品やパゾリーニ監督作品の『奇跡の丘』(1964)の音楽を手がけたことで知られる。
『イル・ポスティーノ』はマイケル・ラドフォード監督による1994年の作品で、実在したチリの詩人パブロ・ネルーダ(1904-73)のイタリア亡命時代を題材としている。この作品によって、バカロフは1995年度アカデミー賞の作曲賞を受賞した。
エンニオ・モリコーネ:
夕餉の食卓、シシリアン
『夕餉の食卓』(1969)は、ジュゼッペ・パトローニ・グリッフィ監督によるコメディ作品。当作品は、モリコーネとも数々の作品を手がけたイタリアン・ホラー映画の巨匠ダリオ・アルジェントが脚本を手がけている。モリコーネ音楽の特徴の一つに挙げられるスキャット(アルジェントが監督した映画『歓びの毒牙』でも効果的に用いられている)を用いたボサノバ調の音楽。
『シシリアン』(1969)は、ジャン・ギャバンとアラン・ドロン共演による、アンリ・ヴェルヌイユ監督の作品で、マフィアによる犯罪をテーマとしたフィルム・ノワールの傑作。テーマ音楽は“渋み”を備えており、原曲で使用された(この時期モリコーネが好んで用いていた)「口琴」が印象的。
ニーノ・ロータ:
ゴッドファーザー・メドレー、8 1/2、ロミオとジュリエット、カサノバ、
甘い生活、魂のジュリエッタ、アマルコルド
イタリア映画音楽史上最高の巨匠ニーノ・ロータ(1911-1979)にとって、映画音楽は「趣味に過ぎない」ものだったそうだが、彼の歴史的偉業は、映画音楽においてなされたことは疑いもない。クラシック音楽におけるその作風は、師であるピツェッティやカゼッラなどの新古典主義の影響が強かったが、映画音楽での彼は、変幻自在にスタイルを使い分ける作曲家であった。
フランシス・フォード・コッポラの傑作『ゴッドファーザー』(1972)は改めて語るまでもない、マフィアの名家コルレオーネ一家をめぐる激動の物語。名曲《愛のテーマ》を始めとする魅惑的な音楽は、映画音楽家ロータの代表作と言える。
『8 1/2』(1963)は、もっともコラボレーションの多かった巨匠フェデリコ・フェリーニ監督による実験的な作品。その調べには、諧謔さと猥雑さが感じられ、虚構と現実を描いた映画に相応しい音楽となっている。
『ロミオとジュリエット』(1968)は、オペラの演出家としても名高いフランコ・ゼッフィレッリ監督による作品。燃えさかる愛の炎を表すようなテーマを始めとする一連の音楽は、人々の心を掴み、イタリア映画界で大きな名誉とされるナストロ・ダルジェント作曲賞を受賞した。
以下は、全てフェリーニ監督との共同制作によって生まれた音楽。華麗な女性遍歴を誇る作家カサノヴァを描いた『カサノバ』(1976年公開)、ローマの上流階級の退廃的な生活がテーマの『甘い生活』(1960年公開)、出世作『道』(この作品もロータの音楽)のジェルソミーナ役で知られる女優ジュリエッタ・マシーナ(フェリーニの妻でもある)へのオマージュ的な作品『魂のジュリエッタ』(1976年公開)、少年時代のフェリーニを題材とした自叙伝風の『アマルコルド』(1974年公開)という、監督そして作曲家にとっての円熟期に作られた4作品を採り上げる。
主催:東京・春・音楽祭実行委員会 後援:イタリア文化会館