PROGRAMプログラム

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2013-

アレクサンドル・メルニコフ ピアノ・リサイタル

ロシアが生んだ正統派ピアニスト、メルニコフが東京春祭に初登場です。ショスタコーヴィチでの名演も記憶に新しい彼が、現在力を入れているというシューベルト、ブラームスもまた必聴です。

プログラム詳細

2013:03:29:19:00:00

© 青柳 聡
■日時・会場
2013.3.29 [金] 19:00開演(18:30開場)
東京文化会館 小ホール

■出演
ピアノ:アレクサンドル・メルニコフ

■曲目
シューベルト:
 幻想曲 ハ長調《さすらい人幻想曲》D.760 speaker.gif[試聴]
 3つの小品 D.946 speaker.gif[試聴]
ブラームス:
 シューマンの主題による変奏曲 op.9 speaker.gif[試聴]
 幻想曲集 op.116 speaker.gif[試聴]
[アンコール]
プロコフィエフ:つかの間の幻影 op.22-10
シューマン:知らない国々 op.5-1
ショパン:練習曲 嬰ハ短調 op.10-4

【試聴について】
speaker.gif[試聴]をクリックすると外部のウェブサイト「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」へ移動し、
プログラム楽曲の冒頭部分を試聴いただけます。
ただし試聴音源の演奏は、「東京・春・音楽祭」の出演者および一部楽曲で編成が異なります。


出演者

ピアノ:アレクサンドル・メルニコフ Alexander Melnikov 1973年モスクワ生まれ。モスクワ音楽院でレフ・ナウモフ教授に学ぶ。卒業後、ミュンヘンでエリソ・ヴィルサラーゼに師事。アンドレアス・シュタイアーらから手ほどきを受けた他、スヴャトスラフ・リヒテルにその才能を認められた。89年のロベルト・シューマン国際音楽コンクール、91年のエリザベート王妃国際音楽コンクール等、主要な国際ピアノコンクールで上位入賞。▼続きを見る 以来、国際的に活躍する。ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ、シャルル・デュトワ、ヴァレリー・ゲルギエフ、ミハイル・プレトニョフ、ユーリ・テミルカーノフといった指揮者や、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団、ロシア・ナショナル管弦楽団、サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団、ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団、NHK交響楽団等と共演。リサイタルではコンセルトヘボウ、サントリーホール、アルテ・オーパー、クイーン・エリザベス・ホール、シャトレ座等、世界の主要なホールに出演。室内楽ではヴァディム・レーピン、ユーリ・バシュメット、ピーター・ウィスペルウェイ、ジャン=ギアン・ケラスらと共演。現在はイザベル・ファウストとデュオを組んでいる。また、シュタイアー、ボリス・ベレゾフスキー、アレクセイ・リュビモフらとピアノ・デュオ活動も行っている。ハルモニア・ムンディ(仏)よりブラームス、ラフマニノフやスクリャービンのソロの他、ファウスト、ケラスらとの共演による室内楽曲をリリース。ファウストとのベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集はドイツのエコー・クラシック賞及びグラモフォン賞を受賞。ショスタコーヴィチの『24の前奏曲とフーガ』は2010年度の“Choc de Classica”賞(「Classica」誌最優秀賞)を受賞した。

©Marco Borggreve ▲プロフィールを閉じる

ピアノ:アレクサンドル・メルニコフ Alexander Melnikov

■曲目解説

シューベルト:幻想曲 ハ長調《さすらい人幻想曲》D.760
 タイトルの「さすらい人」は、第2楽章の主題が自作リート《さすらい人》(D.493)の旋律からとられていることに由来する。冒頭のダクチュル音型(長短短のリズム)が主要素材となるが、本曲はその変奏となるような構造になっている。
 4楽章構成ではあるが、楽章間には休止もなく、続けて演奏される。ダクチュル音型の和音連打で幕を開ける第1楽章、第2楽章のアダージョでは《さすらい人》の旋律が変奏され、第3楽章の躍動感に満ちたスケルツォを経て、終曲である第4楽章は重厚なフーガで始まり、目眩めくヴィルトゥオジティ溢れる華麗なフィナーレへと突入していく。作曲は1822年。それまでピアノ・ソナタというジャンルでは思うように軌道に乗れず、しばらく未完が続いたシューベルトにとって、突破口となった一曲だった。

シューベルト:3つの小品 D.946
 最晩年におけるシューベルトの創作力は凄まじいものだった。死の前年に《4つの即興曲》を2集(D.899、D.935)書き、翌1828年の1~4月は《幻想曲ヘ短調》に没頭し、続く5月に内容的には即興曲に近いこの「3つの小品」を書き、9月には傑作として名高い3つのピアノ・ソナタ(第19、20、21番)を仕上げている。そして11月に31歳で夭折するのである。
 「即興曲」「幻想曲」といったシューベルト独自の小品ジャンルは、主題に「歌」を内包するシューベルトにとって、既存の形式を超えるための必須の受け皿だったのではないだろうか。「3つの小品」は長らく忘れられていたが、死後40年経った1868年、ブラームスによってまとめられ、出版された。

ブラームス:シューマンの主題による変奏曲 op.9
 1854年6月から2ヵ月ほどかけて、21歳の若きブラームスが作曲。同年2月、シューマンはライン河へ投身を企て、ボン郊外エンデニヒの精神病院に収容された。
 この変奏曲はシューマンの《色とりどりの小品》op.99の第4曲「音楽帖Ⅰ」から主題がとられており、主題と16曲の変奏からなっている。「かなりゆるやかに」という指示で始まる主題は、シューマンらしい抒情性を湛えて、哀愁さえ感じさせる。第8、10、14、15変奏ではカノンが用いられ、終曲の第16変奏で、消え入りそうなため息のように静かに全曲が閉じられる。

ブラームス:幻想曲集 op.116
 こちらは打って変わってブラームス最晩年のピアノ小品集である。7つの幻想曲は、3曲のカプリッチョと4曲のインテルメッツォ(間奏曲)からなっている。
 1890年頃から創作力の減退を感じたブラームスは、身辺の整理すら始めていた。それが優れた演奏家との出会いもあって、創作欲が再燃し、いくつかのソナタ作品やピアノの小品を、まるで置き土産のように書き残すのである。本作が、なぜ「幻想曲」と命名されたかは定かではないが、晩年に至る寂寞とした感情や孤独がほとばしるような暗い情熱を秘めた曲集である。ただ、そのなかにも透徹したかのような諦観がふと垣間見えたりする。そういった「幻想」に基づく作品であるということなのかも知れない。


主催:東京・春・音楽祭実行委員会 協力:キングインターナショナル

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