HARUSAI JOURNAL春祭ジャーナル

春祭ジャーナル 2013/01/26

アーティスト・インタビュー
~池上英樹(マリンバ)

多彩なアーティストによるさまざまなバッハをお届けする「東博でバッハ」に出演する池上英樹さんに、バッハについて、そしてコンサートの聴きどころなど演奏会への意気込みを伺いました。

池上英樹 © T. Oda
HidekiIkegami(c)T.Oda_2.png clm_q.png  池上さんにとってのバッハとは
 マリンバや打楽器のオリジナル作品は現代音楽なので、楽器を始めてすぐに現代曲を勉強する人がほとんど。僕もフランスに留学して国際コンクールで優勝した時はクラシック音楽を始めて何年か、という状態でまだ何も勉強していませんでした。これからどう勉強していこうかという時にドイツへ移り、コンサート活動をやめて、バッハだけに取り組んだんです。僕は経歴がぜんぜんクラシックではないので、どうバッハが偉いのかわからないままに(笑)あとは太鼓(コンガ)を一発叩くということだけ。そんな練習を1年半ひたすらやって、バッハのすごさがわかったというか。
 なので、自分にとってバッハは留学体験の記憶にすごく結びついています。また、自分が何に一番価値を置いているのかを考えさせられます。いらないものをそぎ落とし、ただの一人の人間に立ち返り、ニュートラルな状態に立ち戻らせてくれる、そんな存在です。

clm_q.png バッハとほかの作曲家との違いはどんなところでしょうか
 バッハを一言で例えると「調和」。バッハの作品はバランス感覚が大事で、メロディだけを美しく歌うことに集中してはダメ、ジャズのような和音の形に集約していくと足りないし。一カ所だけ突出するのではなく調和された世界が出来上がっているのがバッハで、それがほかの作曲家にはないものだと思います。一方を崩すと倒れてしまう積み木みたいなもの、という感覚です。
 バッハを勉強する前と後では音楽の捉え方が変わりました。例えば、メロディをきれいに歌う曲でも伴奏部分を気にしたり、和音の動き方や低音から高音への音の飛び方を工夫したり、バッハに限らず現代作品でも、音楽を立体的に考えて作品に取り組むようになりました。音符を線で結ぶと音のラインができますが、すべては音のライン上で行われることで、ラインをとても意識します。

clm_q.png 初のオール・バッハプログラム、選曲のポイントを教えてください
 ヴァイオリン、チェロ、クラヴィーア、歌などいろいろな楽器の作品を入れたプログラムにしています。コラールはカンタータを全部聴いて、トッカータとフーガにうまく繋がる調性の作品や、これ!と思う作品を選曲しました。歌詞がある作品は、ちょっとした演出も考えています。
 また、演奏会で初めて取り上げる作品がいくつか並んでいます。カンタータ、シュープラー・コラール集、前奏曲とフーガ。無伴奏ヴァイオリン・ソナタは抜粋でプログラムに入れたことはありますが、全楽章を通して演奏するのは今回が初めてです。
 そして、マリンバにはオリジナル作品はないので、ほどんどの作品を自分で編曲しています

clm_q.png 具体的にどんな編曲か教えてください
 もとの曲をがらりと変えることはしていません。例えば、ピアノと同じ和音をマリンバで出そうとすると、打つ時の衝撃で同時にいろいろな音が混在してしまうので、編曲で工夫をしたり、和音で押さえられない音を分けて弾くなど、物理的なことを行います。またマリンバは低音の響きが特に気持ちが良いので、うまく取り入れたり調を変えたり、楽器の長所が活きるように編曲しています。

clm_q.png ズバリ、聴きどころは
 マリンバでのオール・バッハプログラムは日本初?とにかく珍しい演奏会です。「シャコンヌ」は、オリジナルの音域から1オクターブ下げて編曲しているので、ヴァイオリンとの違いを楽しんでもらえると思いますし、誰もが好きな作品なので客観的にも聴きものです。また、「トッカータとフーガ」も有名な作品なので、どんな風になるのか自分でも楽しみにしています。


~出演公演~
ミュージアム・コンサート

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