春に寄せて
10年ひと区切りといいますが、来春で、音楽祭は8年目を迎えます。秋風が吹き始めると、あらためて、時の流れの速さに驚くのですが、来春の音楽祭のプログラムを発表できる楽しみがあります。夏が去り、秋が訪れ、冷たい冬の風が温み始まると、桜の蕾が膨らみ、『東京・春・音楽祭』が始まります。
今年は、原発事故、金融危機、気候変動による異常気象と、宇宙の小さな惑星である地球で、日々の営みを過ごす私たちには、大きすぎる課題が次々と降りかかってきました。千年に一度という規模の地震と津波が襲い、原発の事故を引き起こしたのは、今年の早春、まさに音楽祭が始まるときでした。
被災地の方々の苦しみを考えると、音楽祭の開催の是非については、難しい判断を迫られたのですが、苦難の時、人々が苦しみの中で希望を失いかけている時こそ、音楽の力で、安らぎと、人が生きることの素晴らしさを分かち合おうという決断をし、可能な限りの演奏会を強行しました。
桜吹雪が舞うフィナーレに、日本の震災復興に心からのシンパシーを持ってくださった、指揮者のズービン・メータさん、NHK交響楽団、急遽、駆けつけていただいた歌手の方々、東京オペラシンガーズによるベートーヴェンの第9交響曲の演奏は、聴衆、演奏家がひとつとなり、誰もが瞼を濡らすほどの感動を分かち合えました。それは、『東京・春・音楽祭』を主催する人間にとって、音楽が持つ力の偉大さを、あらためて、心に刻み込むことができ、音楽祭の次の発展に向け、より一層の努力を傾ける励ましとなりました。
さて、来春の音楽祭は、バイロイトでも活躍されていたアダム・フィッシャーさんの指揮による《タンホイザー》をはじめ、80を超える演奏会を予定しています。来春こそ、日本の文化の魂ともいえる桜の季節を、音楽祭がおとどけする音楽とともに、心から祝えることを楽しみにしています。ぜひ、皆様も春の上野に足を運んでいただきたいと思います。
東京・春・音楽祭実行委員会
実行委員長![]()
