SPRING FESTIVAL IN TOKYO東京・春・音楽祭について

15周年の春に寄せて

 「東京・春・音楽祭」は、2019年、15年目の春を迎えました。「東京」に住む人、働く人、事業活動を行う組織など、「東京」とかかわりを持つ皆さんと、協力しながら、世界的な音楽祭に発展させようと始めたのが2005年です。 音楽祭が開催される上野公園は、江戸期、寛永寺の境内であり、桜の名所でした。明治維新後、厳しい財政難の下で、世界的な文化ゾーンをつくろうという明治政府の志が、途切れることなく踏襲されてきたのが、現在の上野公園です。絵画、音楽等の西洋文化受容の地であるとともに、伝統ある日本の芸術を発展させる基盤となっています。芸術家を育てる教育機関、様々な博物館等、文化を守護、発展させるインフラを、営々として構築し続けてきました。

 上野こそ、絢爛と舞う桜と音楽の祝宴で、春の喜びをわかちあうにふさわしい場です。早春の冷気に、つぼみが膨らみ、あたたかい春のひかりに花がひらき、花吹雪になって散るまでの時間、上野公園は、音楽と桜の響宴する空間となります。音が消え、桜が散る。音楽も桜も、形としては、なにも残らず、記憶だけが、いつまでも生きる喜びとして慰めを与えてくれます。時の流れは、移ろいやすい季節と似て、「束の間の幻影」のように、消えてしまいますが、喜びや悲しみは、音楽や桜の感動とともに、いつまでも鮮やかな記憶として残っていきます。豊かな記憶を重ねることだけが、人が生きる喜びなのかもしれません。「東京・春・音楽祭」は、皆様のご協力のもと、さらに大きな広がりを持てるよう努力を続けていきます。

東京・春・音楽祭実行委員会
実行委員長鈴木幸一

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